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2008年01月19日(土)更新

【取材日記】メリーチョコレートカムパニー・原邦生さん

先日、メリーチョコレートカムパニー社長・原 邦生さんに、
経営者会報2月号・特集「収益力の高い会社をつくる」の
冒頭「提言」でご登場いただくため、
取材をさせていただきました。

実は数年前、原さんご自身の一代記を弊誌に連載させていただき、
記事を私が担当した関係で、もう何度もお会いし、
その都度、大変、勉強をさせていただいています。

はらさん

■メリーチョコレートカムパニー ホームページ>>>
http://www.mary.co.jp/

みなさんご承知の通り、メリーチョコレートカムパニーは、
ギフトチョコレートメーカーとして日本一といっていい会社です。

同社はなんと、9年連続で増収増益。その間、売上高経常利益率も、
おおむね10%を維持され、無借金経営も続けています。
その収益性の高さの秘訣をご披露いただこうと、
取材をさせていただいた次第です。

ちょこ

原さんは、創業者であるお父上の逝去に伴い、
86年に社長に就任。IT経営の先駆者として知られています。

94年には「情報流通センター」を設置・稼働させました。
これは同社の千葉・船橋市の工場における
商品の入庫・保管・出庫まですべてコンピュータで一元管理し、
商品の出し入れもロボットが行なうというものです。

これにより、70名いた物流部門の人員を9割削減、
その人たちを適材適所で配置することで、
新たな商品開発や事業展開に着手するゆとりが生まれたそうです。
同社のIT活用はそれだけにとどまりません。

店舗の売上はすべて本部でその日のうちに把握でき、
SCM(サプライチェーン・マネジメント)も、
2002年から着手しています。

原さんはこうおっしゃいます。

「要は人には“人にしかできないこと”をやってもらい
“機械でできること”は機械に任せればいいんです。私
に言わせればITとは、インフォメーション・テクノロ
ジーではなくて「インテリジェンス・テクニック」の略
です。情報を知恵として活かすことが肝要なのです」

原社長の指揮下、同社は業界では稀な高収益企業に成長していきます。
しかし、そのこと自体が目的であったわけではありません。

「父は生前、亡くなる前の数年間は、私に遺言のように
『家族的な経営は絶対変えるな。少数精鋭集団による高
収益・高賃金を貫け』と繰り返し、言い聞かせていまし
た。その父の考えを大事にして、私なりに時代に合わせ
てアレンジしてきたのです」

つまり、高収益を目指したのは、
人を大切にする家族的な経営を貫くため。
しかし、高収益な体質にしなくては社員に高い報酬を出せません。
同社は、そのところを、うまくバランスを取ってきたといえます。

現実の経営では、おそらく、
そのバランスを取るのが至難なのだと思います。

同社がそのことに成功した理由を、たった一つだけ挙げるなら、
原さんの、自ら汗を流し、率先する姿にあったと私は思っています。

詳しくは、2月1日発行予定の経営者会報2月号をご覧いただきたいと
思いますが、原さんは、かの上杉鷹山を尊敬し、本社屋の玄関脇に、
鷹山のものとして伝えられている一節を石碑にしておられます。

人材育成の要諦として、自分自身の肝に銘じるとともに、
自社の役員や幹部のかたにも実践してもらいたいからだそうです。

ようざん

付け加えますと、社員のかたがたに接するとき、原さんが心がけてきたのは、
常に同じ目線になるよう、ご自分からおりていくということ。
これは役員・幹部のかたにも強く求めてきたといいます。

以下のエピソードには、その原さんの思いがよく出ています。

原さんは、いまはやめておられるそうですが、
以前、新卒社員の懇親会の席によく抜き打ちで“乱入”して、
手品を披露されていました。
同社では、入社式で、新人さんに、「一芸」の披露を求めます。
「社員に求める以上、社長もやらないと不公平」(原さん)と
考えて、手品を披露してきたそうです。

少し前、奥様に、
「あなたの手品は長いのよ。ああいうものは、ぱっとやって下がるのがいいの。
みんな迷惑しているかもしれないでしょう」
と「だめ出し」されたたため、自重しておられるそうです。

なお、原さんは、日本流の「バレンタインデー」の生みの親でもあります。
いまや、菓子業界挙げての一大イベントとなったバレンタインデーですが、
実は原さんが東京・新宿の伊勢丹でフェアを行ったのが最初。

まだ学生さんだった原さんが、お父上の商売を手伝うなかで
閃いたそうです。
しかし、最初の年、1958(昭和33)年のフェアの売上は、
たった170円。3枚のチョコレートしか売れなかったそうです。

ここでちょっとだけ宣伝をさせていただくと、
原社長の著書が、今月末、弊社より発刊されます。

タイトルは社長の力で会社は元気になる!です。

ほん

たった3枚のチョコレートから始まって
一貫して現場で体得してこられた、ご自身の経営哲学が
あますことなく、詰め込まれています。
お手に取っていただければ幸いです。

きっと、多くの経営者のかた、ビジネスマンの参考になるはずです。

(編集部・酒井俊宏)



けいかい12
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