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2008年06月13日(金)更新

【取材日記】メトラン トラン・ゴック・フックさん

先日、経営者会報「異能経営者がゆく!」の取材で、
凄い人にお会いしてきました。

ベトナムから来日し、いまでは帰化して日本人となった、
株式会社メトラン社長・新田一福(トラン・ゴック・フック)さんです。

ふっくさん

■メトラン ホームページ >>>

1947年にベトナム・ユエ(フエ)市に生まれたフックさんは、
68年、私費留学生として来日。

東海大学工学部で学ばれ、ご卒業と同時に
医療機器メーカーに研修生として入社されます。
そして、84年に独立し、メトランを設立。

その間、ご存じの通りベトナム戦争があって、
ご両親の住んでおられたサイゴン(現ホーチミン)が陥落。
音信不通になってしまいます。(のちに感動の再会を果たされます)

運命に翻弄されながらも、フックさんは夢を追いかけ、
世界初の「高頻度振動換気(HFO)人工呼吸器」を開発。

かつての人工呼吸器は、圧力をかけて肺胞を膨らませ、
呼吸させるものが主流で、
呼吸器系統が形成されきっていない未熟児に使用すると、
後遺症が残るケースも多かったそうです。
同社はリニアモーターで1分間あたり900回という細かい振動を作り出し、
肺胞に負担をかけず、自然な呼吸を促すことに成功します。

このジャンルにおいては、日本一のシェアを誇り、
多くの未熟児の命を救っておられるのです。

当時、フックさんと同様の、
ベトナムの富裕層の子弟は、
留学先に欧米を選ぶ人が多かったそうですが、
少年の頃から日本に憧れ、
合気道など武道をたしなんでいたフックさんは
日本行きを選びます。

フックさんはどうしてそれほどまでに
日本に憧れたのでしょう。

詳しくは、来月1日発行予定の経営者会報7月号を
お手に取っていただければと思いますが、
フックさんは次のようにおっしゃいました。

お聞きしている間、
私は不覚にも、目頭が熱くなってしまいました。

「私は東洋は一つの共通した文化圏だと思います。
ある時代まで、日本もベトナムも中国からたくさ
ん学んだけど、東洋的な価値観のよい面、たとえ
ば義理とか人情などの道徳観を国づくりのレベル
で活かして、近代国家を実現した国は日本だけな
んです。日本人は東洋の“宝物”のようなものを、
東洋の人たちのために大事に守り、形を整えて育
ててくれた。これは凄いことです」


日本と日本人を、ここまで評価してもらえるのは、
過去の立派な、私たちの先達・父祖のおかげに他なりません。

来日されてからも、
フックさんの親日度は変わりませんでした。

「実際に来てみたら、みなさん本当に温かかった。
研究者として成功できたのは、面倒をみてくださ
ったたくさんの人たちのおかげ。日本と日本人が
好きだから、『ああ、日本ではこうなんだ』と、
違い自体が面白くて、毎日が楽しくてしかたがな
かった」


フックさんは「お世話になった」という日本で
事業を通じて社会貢献をしてこられました。
将来的には、ベトナムに生産拠点をもち、
世界中に同社製品をもたらし、同時に、
母国ベトナムでの雇用創出に寄与するという考えをおもちです。

そんなフックさんのお話を
1時間あまりお聞きしていると、
すでに日本に帰化されているフックさんには大変失礼ながら、
普通の日本人よりもはるかに日本人らしいかただと思いました。

同時に、かつての日本には、きっとフックさんのような
素晴らしい心映えの人がたくさんいたのではないか、と思いました。

私ごときになにができるのかわかりませんが、
フックさんの姿勢を見習って、まずは、足もとの小さなことから、
フックさんが憧れを抱いた日本人の一人として
恥ずかしくないふるまいをしていこう、と肝に銘じた次第です。


(編集部・酒井俊宏)



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