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2009年03月24日(火)更新

【取材日記】平成建設 秋元久雄さん

中小企業にはなかなかよい人材は来ない──。
それは一面事実かもしれませんが、
よい人材を採用できている企業は現実にあります。

そうした企業のトップにお会いすると、
結局は、トップの熱意次第ではないのか、
と思えてきます。

最新号の経営者会報3月号「異能経営者がゆく!」
ご登場いただいた、平成建設(静岡県沼津市)の
創業社長・秋元久雄さんの、採用にかける情熱は
凄いものがありました。
詳しくは、最新の3月号をお手に取っていただければと思いますが、
以下、少しご紹介します。

あきもとさん

へいせいけんせつ

■平成建設 ホームページ >>>

代々の大工棟梁の家に生まれた秋元さんは、
一時はウェイトリフティングでの五輪出場を目指し、
自衛隊体育学校に入学します。
残念ながら夢は叶わず、ゼネコンやハウスメーカーで
営業職として飛び抜けた成績を上げたのち、独立。
1989年のことです。
減少傾向かつ高齢化する「大工」さんを
自らの手で育てるための選択でした。

もちろん、何事も下請けに出すのが当たり前の業界で、
自前で大工を育てられたら、企業としての大きな強みになる、
という経営者としての読みもありました。

「大工を社内で育成したらどうかと、何度も勤め先で
進言した。でも全く受け容れてもらえない。それはそ
うです。職人を正社員として抱えれば、教育コストも
かかるし、受注産業なので仕事の量にも波があり社会
保険料等を含めた固定費の負担もばかにならない。誰
も内製化なんてしたがりません」


そして創業して8年目の97年、
地元以外での新卒採用に踏み切ります。
地元の優秀な人材を、
毎年一人か二人は採用できるようになってきたことで
手応えを得たからです。

「静岡に一人いるなら、全国から集めたら、50人くら
い採れるだろう、と単純に考えた(笑)」

いつのときも、秋元さん自ら、説明会に出て、
熱く、仕事のやりがいを訴えるうちに、
いつしか、東京工業大や東大、早慶、
地方の国公立大学などから、優秀な新卒が
集まるようになりました。

「元来、大工は自分で設計もすれば現場の管理もやる。
棟梁ともなればそれが当然で、自分も職人でありなが
ら職人をうまく使う。高度な知識と技能、経験を要求
される仕事でした。高度成長期に分業化が進んで、そ
うした仕事は求められなくなり、大工はやりがいのな
い職業になり果ててしまった。業界挙げて分業化した
結果、大工仕事の価値を貶めてしまったのです」


秋元さんは、その価値をもう一度、
取り戻そうとしておられます。
内製化に徹することで、中間マージンはなくなり
コスト面で優位に立てるほか、
顧客の要望をダイレクトに聴き、
施工に活かすことにもつながっています。

現在、同社は、リクルートの就職人気ランキングのゼネコン部門で
大手に伍してトップテンの常連になっています。

それにしても、同業他社がやらない、
リスクのある取り組みに秋元さんが挑戦できたのはなぜなのか。

私は「成功への確信」に尽きると思います。
その確信はおそらく、単なる成功意欲からは生まれない。
秋元さんはこう危惧します。

「このままでは大工がいなくなり、日本の伝統建築を
手がけられる人間は誰もいなくなる。これは文化の損
失です」


このスケール感ある「志」があってこそ、確信は強化され、
志に裏付けされた確信を経営者がもっているから、
若者たちの心を捉えるのではないか。

そう思わずにはいられませんでした。

秋元さん、ありがとうございました!



(編集部・酒井俊宏)



けいかいさん
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