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2008年02月08日(金)更新

部下指導の要諦──一段上の立場に立って考えること

バレンタインデーが近づいてくると
どうしてもお顔が浮かんできてしまうかたがいます。

別に艶っぽい話ではなく、ある社長さんのことです。
その社長さんとは、少し前、拙ブログの
『取材日記』でもご紹介させていただいた、
メリーチョコレートカムパニー原邦生さんです。

■メリーチョコレートカムパニー ホームページ>>>
http://www.mary.co.jp/
■【取材日記】メリーチョコレートカムパニー・原邦生さん
http://sakai.keikai.topblog.jp/blog/a/10007611.html

ここでも書きました通り、原さんは、
日本のバレンタインデーフェアの“生みの親”です。

ひところに比べるとやや落ち着いた観もある
バレンタインデーというイベントですが、実際、
フェア中の業界全体の売上は以前ほどではないと聞きます。

しかし、同社では、毎年、この時期においても、
フェア中の売上は年々、着実に伸ばしておられます。
品質重視の姿勢が、顧客の支持を得てきたからでしょう。

原さんのお顔が浮かんできて、以前の取材日記では書ききれず、
しかし、書きたかった話があったことを思い出した次第です。
チョコレートやバレンタインの話ではなく、
社員教育に関する話です。

原さんには何度も取材でお会いして、
その都度、記事にする云々を超えて、
いつも新たな気づきをいただいてきました。

一番印象に残っているのが、人材育成に関する、
ある考え方です。

5、6年前だと思いますが、私は原さんにこんな質問をしました。

「部下指導や社員教育で、どの会社、業種でも通用する、
具体的なやり方はありませんか」

具体的に、とお聞きしていながら、いま思うとわれながら
漠然とした質問ですね……。

でも原さんは、間髪入れず、こう答えてくださいました。

「簡単です。当社では、どんな社員も必ず、一つ上の職
制に立ったつもりで自分の行動を客観視するように指導
しています。つまり、一般社員なら自分が課長クラスに
なったつもり、課長なら部長、部長なら役員に、役員な
ら社長になったつもりでね。すると、自分が直属の上司
にとって“よき部下”であるかどうかがよくわかります。
親父の創業以来の考えで、それを私も踏襲しています」

お話をお聞きし、われとわが身を顧みて、
それこそ目からウロコが落ちたことをよく覚えています。

仕方のないことですが、人は誰しも
自分中心にものごとを考えがちです。
「俺はこんなに働いているのに、上はわかってない」
と、周りの人も頑張っていることを忘れ、
「こいつはもっとやれる。だから甘い顔はしない」
と期待して見守ってくれている人の思いにまで
考えが至らなかったりします。

私のような仕事でいうと、編集長の立場に立てば、

・締め切りまで数日残して入稿作業が終わっている
・何も言わなくてもよい人物、会社に取材し、よい記事が書ける
(原稿に朱を入れたり、書き直しを命じる必要なし)
・よい企画を知恵を絞って出す
・同僚や後輩に対して、自分のノウハウを惜しみなく出す
・明るい職場になるような雰囲気づくりを心がけている
・自分の部署や、自分の都合だけを優先しない
・したがって、急な仕事でも嫌な顔をせず、喜んで引き受ける
(編集長から「悪いけど今日中に編集後記書いてくれないか」と言われた場合など)

……つまりは仕事が高いレベルで自己完結していて、周囲や会社によい影響を及ぼす。
そんな、よきフォロワーシップをもっている部下が望ましいに決まっています。

とてもそんなレベルにはなく、
頭から冷たい水を浴びた気分でした。

そして、それよりずっと以前の、
書籍を担当していた28、9歳の頃の
自分のことも思い出しました。

当時、私としては、面白く、
斬新な企画を出しているつもりでも
いっこうに通らない。
「上司も会社もわかってない、見る目がない!」
と不遜な思いを抱いたものでした。

しかし、よく考えてみると、多少面白い企画であっても、
では、それを当時の私が担当して実現するだけの力はあったのか。
あるいはそう思ってもらえるだけの実績を積み重ねてきたのか。

いずれも「否」だったと思います。

原さんにこのお話をうかがった瞬間、そう気づきました。
不平不満を言う前に、上司や会社、同僚に信頼される自分でなくては
ならない、そのことに気づいたのです。

いまもって私自身、肝に銘じなくてはいけないことだと思っていますが、
これは、弊社の若い社員にも知っておいてもらいたい
“基準”だと思っています。
シンプルで説得力があり、業種・業界・企業規模を問わず、
通じる基準といえるでしょう。

話をメリーさんに戻すと、同社では、
創業者である原さんのお父上の時代から、
入社時に配布される「社員ハンドブック」で
明確にこの行動規範を謳っています。

同社の成長、成功には様々な要因があるとは思いますが、
一つには、この規範を徹底しておられるからではないか、
と思っています。

(編集部・酒井俊宏)



けいかい082a
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2007年11月19日(月)更新

ブログで税務調査がスムースに運んだお話

取材で社長さんにお会いすると、
「なるほど、そんなことがあるのか」
「そんなものの見方があったのか」
と感心したり、納得したりと、
さまざまな刺激をいただきます。

とはいえ、雑誌には載せられない話も多い。
社長さんである以上、会社の評価にも関わってきますし、
底意地の悪い見方をする人も少なくないからです。

以下、記すお話も、
本来、匿名にさせていただいたほうがいい話かな、
と思います。

掲載に当たって、
匿名でも、お許しを得ないといけない、と思い、
ご本人におたずねすると、
「事実ですし、ブログにはこんなメリットがあると
伝わると思います。本名でいいですよ」
と、実名での登場をご快諾いただきました。

実名のほうが、もちろん説得力がありますので、
ご厚意に甘えさせていただきました。

その方は、みなさまおなじみの、
三元ラセン管工業社長・高嶋博さんです。
高嶋さん、ありがとうございます!

ご承知の通り、高嶋さんは熱心なブロガーで、
ほとんど毎日、記事を更新しておられます。

■高嶋さんのブログ >>>
http://mitsumoto-bellows.keikai.topblog.jp/

念のため、三元ラセン管工業さんは、
本業のフレキシブルチューブ、ベローズの開発・製造では
ニッチトップといっていい存在。
大企業とも多くの取引がありますが、
決して下請けではなく、パートナーとして
敬意をもたれています。

その同社に以前、税務調査が入ったときのこと。

「これだけ大企業とのつきあいがあるのに
接待をしていないはずがない」
と当初、調査官は疑い、
高嶋さんがこれまで書かれたブログをすべて
プリントアウトして持参して、
日々のブログと見比べ、経費や交際費をチェック・
照合したのだそうです。

もちろん、いくら調べても
なにも問題点は出てこない。

やがて、途中から、対応が変わってきて
丁重になってきたそうです。

高嶋さんは、出張や展示会などのお話も
写真入りで綴っています。
それらの日々の行動と、すべて辻褄が合うことが
調査官にもわかってきたからでしょう。

最後には、現場の調査官から、

「ブログを読んでいくうちに、
ウソをつかない人だと感じていました」

と言われたそうです。

高嶋さんいわく、

「ブログが正しい“アリバイ”を証明する
ツールにもなるのだな、と思いました」

社長さんが情報発信することのメリットは
こんなところにもあるのか、と思った次第です。

もちろん、それは高嶋さんのように、
真摯に綴られている人ならではの話ではあるでしょう。

逆に、ブログで飾ったことばかり書いている人だと
(うちの会員さんにはそんな人はいませんが)
必要以上に税務署側につつかれ、粘られてしまう、
そんな事態も起こりうるのではないかと思いました。

(編集部・酒井俊宏)



けいかい11
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2007年11月02日(金)更新

中小企業総合展2007に行ってきました!

本日11月2日まで東京ビッグサイトで行なわれた
中小企業総合展2007inTOKYOに行って参りました。

これは、300社以上の中小企業のブースが揃う
一大イベントです。

最終日の、それも終了間際の2時間ほどでしたので、
駆け足になってしまい、当初考えていた、
取材の足がかりにするような出会いはちょっと
つくれませんでした。
実に、営業力不足を痛感しております。

とはいえ、目的はもう一つあって、
そちらは達することができました。

会員さんの枚岡合金工具・古芝保治さん
出展しておられたので、ご挨拶したかったのです。

ふるしばさん

古芝さんはご商談中でいらしたので、
目と目でだけ、ご挨拶を交わさせていただきました。
古芝さん、お邪魔してしまい、失礼致しました。

同社のマスコット「ドルフィンくん」は元気に泳ぎ、
ひときわ目立っていました。

どるふぃんくん

300社以上出展しているというのに、
こうしたアピールをしておられたのは枚岡合金工具さんだけ。
さすがに古芝さんはアイデアマンでいらっしゃいます。

古芝さんもご自身のブログで紹介しておられます。

■中小企業総合展2007inTOKYO速報
>>>http://hiraoka.keikai.topblog.jp/blog/100/10006587.html
■中小企業総合展2007inTOKYO
>>>http://hiraoka.keikai.topblog.jp/blog/100/10006573.html

最後にご挨拶を、と思い、同社のブースにうかがうと、
あいにくご本人は他社のブースへお顔を出されてすれ違いに。

ですが、3S経営革新部統括リーダーの山口泰信さん、
同営業グループの高松定信さんのお二方に
懇切丁寧なご挨拶を頂戴し、デジタルドルフィンについてもご説明いただきました。
山口さん、高松さん、
お忙しいところ、ありがとうございました。

同社のブースだけでなく
中小企業の方々の熱気が伝わってくるイベントでした。

また機会があれば、もう少しゆとりをもって
見学・取材をしたいと思った次第です。

(編集部・酒井俊宏)



けいかい
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2007年10月26日(金)更新

「経営者会報アーカイブ」についてのお知らせ

トップページのリニューアルに伴って、
今、「月刊経営者会報」のアーカイブを
PDFファイルでご紹介しています。
TOP画面から入れます。
これから毎週1回、アップしていきます。

いずれも弊誌の名物となっている連載記事ですが、
ご存じない方のために趣旨をご説明しましょう。

■シリーズ告白
>>>http://kokuhaku.keikai.topblog.jp/

人間の真価は危機に陥ったときに試されます。
経営上の危機を乗り越え、新たな挑戦を続ける経営者が
自らの気づきを本音で振り返る、創刊以来続く名物連載です。

1回目はエス・ティー・ジー大阪虎屋・塩崎凱也さんの記事をアップしています。

■経営者が選んだ名言
>>>http://kotoba.keikai.topblog.jp/

生きる指針、経営の指針として肝に銘じている言葉を
経営者自らが語ります。
経営哲学が1ページにぎゅっと詰まった
人気連載コーナーです。
今は「経営者が語る 私を支えた言葉」のタイトルで
連載しています。

現在、サイエンス・桑原克己さんの座右の銘をご紹介しています。

■異能経営者がゆく!
>>>http://inou.keikai.topblog.jp/

巻頭カラー4ページの目玉記事。
独自性の高い事業に取り組む独創的な経営者の
転機となったエピソードを追いながら
その矜恃や哲学をドキュメンタリータッチで描いています。

連載第1回目の海洋堂創業者・宮脇修さんの記事を
ご紹介しています。

■経営者会報ブログ 会員登場!
>>>http://toujyou.keikai.topblog.jp/

以上の連載記事に加え、
「経営者会報ブログ」の会員のみなさまが、
経営者会報本誌にご登場された際の記事も
順次ご紹介していきます。

雑誌とウェブの融合という、私どもが目指す取り組みの
一つの表われでもあるといえます。

現在、三元ラセン管工業・高嶋博さんがご登場された
『異能経営者がゆく!』を紹介しています。

(編集部・酒井俊宏)




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2007年10月24日(水)更新

【こんな社長さんに会ってきました】会社を潰す社長とは?

いつも素晴らしい方にお会いできて感銘を受け、
この仕事をしていてよかったなと思うことが多い私ですが、
たまに悲しい思いをするときもあります。

年に何十人と経営者の方に取材をさせていただいていると、
なかには会社を傾けてしまう人もおられるからです。

耐震偽装だとか昨今騒がしい食品の製造日の偽装だとかで
そうなってしまうのは自業自得。
消費者への裏切り行為である以上、論外です。
幸い、そういう人にはまだ、直接取材をしたことはありません。

このような例では、従業員の方たちも可哀想だとは思いますが、
悪いことだと知りながら黙って従っていたのだとしたら、
無条件にかばう気にもなれず、複雑な感情をもってしまいます。

これから述べるのは、そうしたケースではありません。
ご商売が思った通りに運ばず、傾けてしまったケースです。

傾けてしまう社長には、共通項のようなものがある気がします。
それについて、思うところを書いてみます。

多くの経営者の方、この経営者会報ブログの会員のみなさまにとっては
言うまでもないことかもしれませんが、
現場で感じ続けたこととして記してみたいので、どうかご容赦ください。

経営者会報本誌にはシリーズ告白という、創刊以来続いている連載があります。
危機に陥り、そこからリカバリーされた方に、お話をうかがうものです。
今は別の編集部員が担当していますが、
今年の夏まで数年間、この連載は私の担当記事でした。

登場された方は、その後、大きく会社を伸ばしておられる方が大半ですが、
残念ながら、再度危機に陥り、会社を畳む方も何人かおられました。

何がその差を生むのか。

まったくの私見ですが、危機を糧にできた方は、

「すべて自分が悪い」

という基本認識をもっておられたように感じています。

逆に、傾けてしまった方は、
取材時、危機に陥った当時のことをうかがうと、

「銀行が…」
「景気が…」
「元請けが…」


と周囲や環境のせいにする発言が目立っていました。

通常の取材でお目にかかる社長さんの口から、
こうした発言が出ることは、まずありません。

おそらく、経営というのは、日々、意思決定の連続で、
多くの経営者のみなさんは、すべて自己責任と肚を括って
決断をしていることでしょう。

それゆえに、自社をとりまく情勢についても、
曇りのない目で客観視でき、
適正な処置が取れるのだと思います。

潰してしまった何人かの方のお顔を思い出すと、
発想力も行動力もある方たちだったと思います。
だからある程度のところまで、会社を伸ばすことができた。

そう考えると、こと危機に当たってどう動けるかは、才能以前の問題であり、
才能を支え、そのもととなる部分にかかっているように思います。
それをも含めて才能といっていいのかもしれませんが……。

経営というものは、規模が大きくなったり、
事業が高度化していくごとに難しさが増し、
経営者に求められる能力も違ってくるとは思いますが、少なくとも、
自己責任だと肚を括って、事業に取り組んでいるのか否か──。

そこがまず最低限、求められる、
「社長の条件」であるように思えてなりません。

(編集部・酒井俊宏)




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