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2009年11月09日(月)更新

【取材日記】牛肉をめぐる冒険  (サカエヤ・新保吉伸さん)─3─

〈前回記事より続く〉

12月1日発行予定の、
ニュートップリーダー12月号の取材=牛肉をめぐる冒険、これで最後です。

サカエヤ・新保吉伸さんのご案内で、
生産農家の木下牧場さんにお邪魔させていただきました。

滋賀県近江八幡市にある同牧場さんまで、
新保さんの車に乗せていただき、帰りも草津駅まで
送っていただきました。
本当にお手数をおかけいたしました。

行きの行程尾では琵琶湖畔のカフェでランチを取ったりして、
ちょっと「いい旅 夢気分」みたいな道中でした。
といっても、男三人で湖畔に面したカウンターに陣取るのは、
少々、絵にならなかったかも・・・

木下牧場さんは、ご夫婦二人に娘さんたちでやっておられます。
ご主人の木下幸雄さんと、奥様の、その美さん。

ごしゅじん

おくさま

お二人ともに、新保さんと志が同じであることが
お話をお聞きして、すぐ理解できました。
エサから変える、という新保さんの、
業界ではまずあり得ないオーダーを承け、
挑戦を続けているご夫婦です。

取材のあとは、お二人のご案内で、
牛舎を見せていただきました。

ぼくじょういち

ぼくじょう2

五感で取材対象を体感することの大切さを改めて思い知らされた、
と前々回の記事で書きましたが、
この日は、私たちの「嗅覚」の出番でした。

都会育ちでない私は、いわゆる「家畜子屋」というのは
これまでの人生の中で、割合、見てきています。
しかし、木下牧場さんの牛舎は、それまでの、私がもっていた
常識を、わずかな時間で覆してしまいました。
全然、「臭くない」のです。

もちろん多少の動物臭はしますが、
牛舎に足を運んですぐ漂ってきたのは、
稲藁と、日なたの匂い。
よく手入れがされ、丹精込めて、
牛たちを育てていることが素人目にもわかります。

牛たちもいたって元気で、
放牧の時間になると、そわそわし出して、
ご主人の幸雄さんが、放牧場に通じる扉に手をかけると、
「もう待てない!」とばかりに、
牛舎の中を輪になってぐるぐると駆け回る。

牛がのそのそ歩いているのは見たことがありますが、
走る姿というのは、スペインの闘牛のシーンを
テレビで観たくらいで、初めての体験でした。

専門的なことは素人が書いて間違いがあってもいけないので、
詳しくふれるのはご容赦いただきたいと思いますが、
健康に育てられ、元気で体力もあることがわかります。

新保さんによれば、無理に太らされた牛では、絶対に無理だそうです。
そういう牛は、出荷前に絶命することもあるそうです。
いわゆる成人病ですね。

木下牧場さんの牛は、無理に肥え太らせたりはせず、
霜降りの牛でも、そうなる血筋を大事にしているそうです。

川上から川下まで、とはよくいわれることですが、
河口から源流まで遡ったような取材は
私としては、今回が初めてでした。

みなさまのご商売に「嘘がない」ことが
ごく自然に体感できました。

そして、われわれ人間は、他の生き物から命を分けてもらって生きていること。
そのことをよく理解して、大切に育てたり、
扱ったりしている人たちがおられて初めて、
私たちが安全で美味しい食べ物を口にできること──。
この旅で学ばせていただいたことは、とても一口には言えません。

新保さん、木下幸雄さん、その美さん。
ほんとうにありがとうございました。

大変勉強になった、10月の「肉の日」でした。



(編集部・酒井俊宏)





ひょうし0911
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2009年11月04日(水)更新

【取材日記】牛肉をめぐる冒険  (サカエヤ・新保吉伸さん)─2─

前回記事より続く〉

牛肉をめぐる冒険、続きです。

南山さんで、美味しい焼肉をいただいた翌日は、
サカエヤ・新保吉伸さんに取材です。

にいほさんです

さかえやさんいち

■新保さんのブログ >>>
■サカエヤ ホームページ >>>

新保さんに取材をさせていただくのはこれで3回目です。
過去の取材に関しては、この【取材日記】でも
ご紹介してきました(↓)。

■【取材日記】サカエヤ 新保吉伸さん >>>
■【取材日記】サカエヤ・新保吉伸さんを支えた創・村上肇さんの言葉 >>>

これまでの取材では、おもに、新保さんの、
現在の事業を構築されるまでのドラマをお聞きしてきましたが、
このたびは、前回記事でも述べたように、
経営の“見られる化”がメインですので、
サカエヤさんのトレーサビリティへの取り組みをメインに
お話をうかがいました。

というより、この企画はむしろ、
新保さんの取り組みを知っていたからこそ出てきたものともいえ、
はじめから「新保さんありき」であったことを
正直に告白します。

同行した榎本も、新保さんのお人柄やその取り組みを知って、
大いに感銘を受けたようです。
(しきりにダイエット法についても聞いていましたが……)

詳しくは、12月1日発行予定の、
ニュートップリーダー12月号をご覧いただきたいと思いますが、
サカエヤさんをお訪ねする際、体感したいと思っていたのが、
同社の雰囲気でした。

“見られる化”が進んだ企業は、当然ながら、従業員からも、
信頼を得ます。
「うちの取り組みは間違っていない」「うちの社長は正しい」
と思えることが、会社に対する信頼感、事業に対する誇りを醸成し、
それが社内に活気を生み、それも含めて「見られて」いく、という
「プラスの循環」を生み出していく──。
そうに違いない、と考えていたからです。

果たして、サカエヤさんは、
以前、取材をさせていただいたときもそうでしたが、
みなさん明るく、活気に溢れていました。

体調を崩して、新保さんに休め、と言われているにもかかわらず、
店長の川畑勇さんが明るい笑顔で頑張っておられる姿も拝見して、
(あんまり無理をしてはいけません……)
私どもの考えていた通りだと、実感させていただきました。

実際、サカエヤさんでは、従業員のみなさんも
「顧客」で、よくお店のお肉を買われていくそうです。

かなり昔の話ですが、某ファストフード店舗でアルバイトをしていた友人は、
「知れば知るほど、怖くて食べられないよ」と言い、
絶対にその店で食事をしませんでした。
サカエヤさんの場合はまったく逆で、従業員のみなさんが、
自分のところで扱っているお肉は安全で美味しい、
嘘がない、ということをよくご存じで、心底、
自分の存在も含めた会社を信頼しているからでしょう。

“見られる化”が進んだ企業は、その取り組みや組織、
さらには、今回のように、取引先(南山さん木下牧場さん
も含めて、どこをピンポイントで見ても整合性があります。

それだけ中身がきちんとしているからこそ、
「見せる」こともできるのでしょうし、
見せる、見られる過程では、顧客からの感謝の声を
従業員さんが体感することになり、さらなるやりがいを生むのでしょう。

これから中小企業が目指すべき方向性、
勝ち残っていくうえでのヒントは、すべてここにあるのではないか。
サカエヤさんと、新保さんの取り組みをうかがい、
そう思わずにはいられませんでした。

長くなりました。

次回、新保さんにご案内していただいた、
木下牧場さんのレポートをお届けして、
この「冒険」も終わりです。

10月29日のこの日は、そういえば、
「肉の日」でした。


(編集部・酒井俊宏)





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