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2008年04月28日(月)更新

【取材日記】篠崎屋 樽見茂さん

埼玉県にお住まいのかたなら、
『三代目茂蔵』というブランドのお豆腐を
食べたことのある人は多いと思います。
このお豆腐は、越谷市を中心に数十店舗ある『三代目茂蔵豆富店』で
入手できます。

しのざきや

店舗を展開しているのが
“町の豆腐屋さん”からスタートした篠崎屋
2003年には東証マザーズに株式を上場しています。
これは業界初の快挙です。

その篠崎屋を創業された社長の樽見茂さんに
お話をうかがってきました。
記事はここで再三ご紹介してきた、
経営者会報5月号特集『信念をもって異端の道を歩む』です。

周囲や同業者から「異端児」扱いされるほど
独自の取り組みができる経営者は、
なにがどのように、普通の人と違うのか。
それを探り、読者経営者諸氏にヒントとして示すものです。

樽見さんにはもちろん、経営事例にご登場いただきました。
戦略家であり行動派である樽見さんは、
身振り手振りを交えて、熱く語ってくださいました。

たるみさん

■篠崎屋 ホームページ >>>

樽見さんのどこが“異端”なのか。
専業の豆腐屋さんとして初めて株式を上場されたのも、
たしかに異端ではありますが、
それはある意味、結果としてそうなったといえます。

ではなにが異端なのか。大きく二つあります。

まず第一に、業界になかったものを作り出したこと。
『三代目茂蔵』のなかでも一番人気なのが、
この絹豆富ですが、これは樽見さんご自身が、
苦闘のすえ、開発されたものです。

とうふ

ご存じの通り、本来、豆腐はにがりで作るものですが、
当時は実はにがりを使わず「酸性ソーダ」というもので
化学的に凝固させる商品が幅をきかせていました。
とくに、きめのこまかい「絹ごし」では、
にがり100%で作られた豆腐はなかったそうです。

樽見社長は次のように振り返ります。

「私の代で法人化して、地場のスーパーマーケット
に卸すようになりましたけど、なかなか業績が上が
らず、廃業すら頭をよぎった。どうせ廃業するなら、
その前に、この世になかった、一番うまい豆腐を自
分で作ってやろうと思ったんです」

一年近い苦闘のすえ、完成に漕ぎ着け、
このお豆腐は改良を加えられつつ、
いまも同社の主力商品となっています。

異端と評されるもう一つの理由が
退路を断つ決断をされたことです。

スーパーのバイヤーに
どんどん買い叩かれたためとはいえ、
経営が苦しい時期だったのに、
樽見社長は自ら取引を切ってしまったのです。
普通は、目先の売上を惜しむあまり、
ずるずると取引を続けるケースが多いのではないでしょうか。

「卸売が駄目なら直売だ」と、
樽見さんは研究に研究を重ね、
「工場直売店」という形の直営店及びFC店舗
(現在は商品を提供する形のみでFC新規展開はしていません)
の展開を進めていきます。

「目先の売上ではなく、会社の明日のことを考えれ
ば、自ずとやるべきことがわかります」

この肚の座ったシンプルな思考法が、樽見さんの
異端者たるゆえんと言えるでしょう。

詳しくは、経営者会報5月号を
ご覧いただければと思いますが、
その異端ぶりを支えたものは、
業界への誇りと両親への感謝の念でした。

樽見さん、ありがとうございました!

ところで、樽見さんをおたずねするのは、
実は2度目(5年ぶり)です。

以前の記事は、経営者会報ブログのアーカイブ欄にアップしていますので、
どうか合わせてご参照ください。

■異能経営者がゆく! 2004年5月号 >>>


(編集部・酒井俊宏)



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