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2009年10月31日(土)更新

【取材日記】牛肉をめぐる冒険  (サカエヤ・新保吉伸さん)─1─

かるび


月刊ニュートップリーダー(経営者会報を新装刊)12月号の
特集 経営の「見られる化」を急げ! の取材で、
先日(10月29日)、副編集長の榎本と二人、
サカエヤ新保吉伸さんをお訪ねしました。

■新保さんのブログ >>>
■サカエヤ ホームページ >>>

みなさまご存じの通り、新保さんは
上質の近江牛肉の販売をおもに手がけておられますが、
信頼できる生産農家のものだけを扱い、
業務用に関しても、信頼できる業者にしか卸さない、
というスタイルを貫いておられます。
それは、業界では先駆的だったトレーサビリティへの
挑戦でもありました。

牛と人を、こよなく愛している新保さんだからこそ、
なしとげることができた、と断言してしまいます。

その新保さんの取り組み、周囲の人たちを巻き込む力を
誌面でご紹介するのが、今回の取材の趣旨です。
詳しくは、発刊後の記事をご覧いただきたいと思いますが、
二日間、カルチャーショックの連続でしたので、
この場では、そちらについて記していきます。

カルチャーショックばかりでなく、
真摯なビジネスに取り組む素晴らしい人たちに出会えて、
大きな感動もいただきました。
そんなご縁をつないでくださった新保さんに、
深く感謝申し上げます。ありがとうございました!

……さて、「冒険」とは大げさな、と言われそうですが、
実際、旅を終えたあとは、まさにそんな実感だったのです。

新保さんをお訪ねする前日、京都入りしたわれわれは、
サカエヤさんの近江牛をいただける、京都の南山さんにお邪魔しました。
冒頭の写真は、南山さんでいただいた、近江牛カルビです。

私は以前、新保さんのご紹介で
同社社長の楠本貞愛さん(素敵な女性です!)に
取材をさせていただいたことがあります。
そのときは、すぐ次の取材現場へ急がねばならず、
「本物の近江牛」をいただくことができませんでした。
ようやく念願が叶いました。

社長さんにはご出張のためお会いできませんでしたが、
妹さんで、取締役を務めておられる孫貞麗さんに、
お話をうかがうことができました。
貞麗さん、そして終始、濃やかな応対をしてくださった
従業員のみなさま、ありがとうございました!

夕刻のため、露出不足ですみません・・・

なんざんさん

かんばんなんざん

■南山 ホームページ >>>

いただいたお肉は、“サシ”が多くはなく、
いくらでも食べられそうな、胃にもたれないお肉です。
味わい深いのに爽やかで、ちょうどいい噛みごたえ。
お肉をいただいている実感があります。

正直、44年の人生で味わったなかで一番! でした。
肉好きなことにかけてはおそらく私を上回る副編集長も、
同意見でした。

↓近江牛のお刺身です。

おさしみ

↓お肉だけでなく、モツやナムルなども最高でした。

もつ

なむる


いわゆる“サシ”の多いお肉こそが上等で、旨い、というのが、
常識化していますが、新保さんの考えは違います。

無理矢理、牛を太らせて脂まみれにしているのが現状であり、
それでは牛も可哀想だし、いただく人間も不健康になる──
新保さんはそう警鐘を鳴らしておられます。

健康で上質なお肉をいただいて、
新保さんのおっしゃることが、
より深く理解できた気がします。

取材というものは、当然ながら、現場、現地に足を運ばないといけない。
自分の五感を総動員して、感じなくてはいけない──。

いつも、そんなふうに肝に銘じているつもりでしたが、
目や耳ばかりではなく、「鼻」や「舌」まで使った
今回の取材では、その大切さを改めて、痛感した次第です。

美味しいお肉をいただいた話で終わってしまいました。
新保さんやサカエヤさんの取り組み、
そして生産農家・木下牧場さんについて、
明日以降、ご紹介していきます。


(編集部・酒井俊宏)







ひょうし0911
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2009年08月07日(金)更新

【取材日記】共伸技研 加藤克典さん

経営者会報最新号では「統率力を鍛える」というテーマで
特集を組んでいます。

つまりは、リーダーシップの話なのですが、
あえて「統率力」としたのには、理由があります。

一人のカリスマ、あるいはワンマン的なトップの指揮で
経営がうまくいった時代はとうに過ぎ、
会社全体で知恵を出し、現場で個々の社員が考えながら
真摯に動いていくことが、差別化のポイントとなりつつあります。
そこでトップが機能するうえでは、社員との関係性が
より重要になってきていると考えるからです。

事例にご登場いただいた経営者のみなさまは
壁にぶつかりながらもその方独自の考えに基づいて、
粘り強く、社員の心をつかんでいったかたばかりです。

そのうちのお一人が、工業用ブラシの開発・製造を手がける
共伸技研(大阪府門真市)の加藤克典さんでした。


かとうさん

■共伸技研 ホームページ >>>
■加藤さんのブログ >>>


経営者会報ブログの会員である村上肇さんの主宰する
「e製造業の会」の会員さんでもあります。
経営者会報ブログの会員さんにもご存じの方は多いことと思います。

お話をうかがって、加藤さんの取り組みは
まさに、二世経営者が社員の心をつかむうえでの
サンプルだと思いました。

詳しいお話は、経営者会報最新号をご参照いただければと思いますが、
さわりをご紹介したいと思います。

加藤さんは、お父上で創業者の重信さんの跡を継ぎ、
昨年、社長に就任しておられます。

2000年に入社した加藤さんは、
それまで在籍していたメーカーに比して
ギャップに悩んでいました。
納期や仕上がりのことで、社員さん同士、
もめることが少なくなかったのだそうです。

みんな、一所懸命やっているのに、どうしてそんなことになるのか──
加藤さんは次のように振り返ります。

「私が目指したのは、皆が楽しく、誇りをもって
働ける職場にすることでした。お客様に喜んでい
ただくには、まず作り手が楽しく働いて、自分た
ちの思いや誇りを込めてものを作ることが大切だ
と思ったんです。その思いは、今も変わっていま
せん」

やがて、加藤さんは、そうした問題を払拭するには
きちんとした生産管理が不可欠だと気づきます。

それはご本人の当初の想像以上に大変な道のりでした。
生産管理以前の問題として、いわゆる「見える化」ができていないとならず、
その事実は、必然的な帰結として、
加藤さんを3S活動へと走らせることになります。
そして、同志ともいうべき大阪府内の8企業が集い、2005年の暮れ、
「大阪生産革新研究会」(略称OPI)を結成するのです。
同会には、当経営者会報ブログ会員の澤田浩一さん率いる
サワダ製作所さんも参加しています。

しかし、活動を開始しようというころ、
「俺たちのやってきたことを否定するのか」と
お父上が猛反発。
途方に暮れた加藤さんでしたが、自ら毎朝、清掃を始め、
そのうちに徐々に見習う社員さんが出て、
その数は当時の全社員18名のうちの7名となりました。

それでも、2006年5月のOPIのキックオフ以後もお父上の許しは下りず、
全社的に取りかかることはできなかったのです。

加藤さんはこの苦しい時期をしっかり足を地につけて乗り切り、
あせらず、7名の同志とともに3S活動を続けます。
ついにキックオフから3か月後、お父上の許可が下ります。

それ以後の同社は、加藤さんを中心に
一体感のある職場となっていき、
3S活動を徹底、そして生産管理にも全社的に取り組み
生産性が大きく向上していくのです。

きょうしんぎけんしゃない

自ら手本を示し、あせらず、
自発的に社員さんが行動するのをじっと待ち続けたこと。
お父上をねばり強く説得したこと。
いまもお父上を深く尊敬しておられること──。

一般的にいって、二世経営者は、
ともすれば早急な改革を急ぐ傾向が強いように思われますが、
加藤さんは違います。

やりたいことを通すには、まず自分の実績を作ることだと、
ネット受注に専念し、売上をつくって社業に大きく貢献。
ネットビジネスは現在、同社の大きな収益源であり、
ブログなどでの情報発信に同社が長けているのも、
加藤さんのこの取り組みから始まっているといえます。

自分が会社を継いでもらう立場にあるとしたなら、あるいは
自分が社員として働く会社で、その会社を二世が継ぐとしたなら、
こんな人にこそ、継いでもらいたい。
加藤さんにお会いし、お話をお聞きしたならば、
誰しもそう思うのではないかと思えてなりませんでした。

取材を終え、帰途についてからも、
そして、すでに記事が誌面に出たいまでも、
その思いが消えません。

加藤さん、ありがとうございました!
大変勉強になりました。


なお、このたびも、会員さんである社会保険労務士・井寄奈美さん
お口添えをいただき、共伸技研さんへの取材は実現しました。
深く感謝申し上げます。
そして、前出・サワダ製作所の澤田浩一さんも
共伸技研さんの弊誌へのご登場のことを書いておられます。
こちらも、ぜひご覧ください。

■OPI 共伸技研・加藤氏が「経営者会報」に登場 >>>

井寄さん、澤田さん、そして、加藤さんをよく知る
経営者会報ブログの会員のみなさまにも、深く感謝申し上げます。

加藤さんが、普通ならなかなかお話しいただけないはずの
立ち入ったお話を、初対面の私にしてくださったのも、
みなさまと加藤さんの強い絆のおかげだと思っております。

ありがとうございました!




(編集部・酒井俊宏)




けいかいきゅうなな
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2009年07月31日(金)更新

【取材日記】長濱製作所 立入勘一さん

過日、経営者会報本誌の取材で
京都に行ってまいりました。
長濱製作所社長・立入勘一さんへの
取材です。

たちいりさん

ながはまさんしゃおく

■長濱製作所 ホームページ >>>

記事は、弊誌に好評連載中の、中村智彦の「ものづくりの現場から」
中小製造業に造詣が深く、ご自身、「ものづくり企業の応援団」を名乗る
神戸国際大学教授・中村智彦氏が全国各地の製造現場を訪れ、
御自ら社長さんに取材し、
他の経営者のかたにとって参考度が高いと思われる点や
注目すべきエピソード、取り組みをご紹介いただくものです。

中村先生は、日本テレビ系列の「世界一受けたい授業」をはじめ、
多くのメディアに登場しておられますので、
ご存じのかたも多いことと思います。

私は取材のたびに、お供をさせていただき
いつも勉強させていただいております。

右のかたが中村先生です。
おふたり

実は、立入さんには、私はすでに何度かお目にかかっています。
経営者会報ブログのテストマーケティング研究所にも
ご出席いただいたことがあり、
経営者会報ブログの会員さんにも、親しくしておられるかたが
何人もいらっしゃいます。

中村先生から「素晴らしい社長さんがおられますよ」と
立入さんをご紹介いただいたわけですが、
“既視感”を感じてなりませんでした。

ある人に、素晴らしい社長さんの存在をお教えいただき、
注目していると、別の人からも同じ社長さんを推挙いただく。
最近、このようなケースが増えているからです。

とくにこの経営者会報ブログの会員さんから
ご紹介いただいたかたに、このような形でお会いすることが
増えてきています。
そして現実にお会いすると、みなさん素晴らしいかたばかり。
よい人が太鼓判を押す人はやはりよい人なのです。

経営者会報ブログという場では、会員のみなさまは善意で
よい情報を互いに教え合っておられますが、その輪の中に
経営者会報編集部も取り込んでいただいている感じです。
会員のみなさまがたには、深く感謝申し上げる次第です。
ありがとうございます。

では、そろそろ立入さんのご紹介を・・・
詳しくは、経営者会報最新号をお手に取っていただきたいと思いますが、
私自身、深く感心させていただいたエピソードを
ご紹介したいと思います。

昨秋来の不況は、いうまでもなくほとんどの業界を直撃し、
そのダメージを払拭できていない企業が多いことと思います。
精密部品製造を手がける長濱製作所さんも、
ダメージは受けています。

しかし、立入さんは、
このたびの危機を一貫して前向きに捉えてきました。
その点が常人離れしています。

昨年春の段階で、すでにこの不況を予測されたそうで
その先見性にも凄いものがありますが、
もっと凄いことに、立入社長は、
その段階で、最新設備の導入を決断するのです。

「仕事が減るなら減ったで仕方がないことです。そう開き
直って、社員のスキルの向上や教育のよい機会だと捉えま
した。最新の設備を導入し、使いこなせるようになれば、
不況が終わったとき、飛躍のチャンスを迎えることになり
ます。実際、過去の経験からみて、不況の後は技術革新が
進むんです。景気が回復に向かったときはお客さんはより
高い技術を求めてきますから」

銀行からの信用もあり、内部留保もあるからこそ、
できることでもありますが、それも、立入社長と
社員のみなさまの努力の賜物でしょう。

いま、景気回復後を見越して、
同社の工場には、顧客である大手メーカーの担当者も
頻繁に足を運んでいるそうです。

中村先生にお供して、工場を見学させていただきましたが、
3S、5S活動に取り組む同社の工場は非常に綺麗で、
明るい雰囲気が漂っていました。

ながはまさんしゃいんさん

こちらが件の最新設備です。
さいしんせつび

お二人のお話がはずみます。
おふたりにばん

教育熱心で面倒見のよい経営者の指揮のもと、
社員はみなさん元気で明るく、それゆえに
いっそう、綺麗で明るい工場に感じられた面も
あるように思います。

果敢にリスクを取る。
社員を愛し、教育に余念がなく、
「ものづくりを覚えるなら中小企業が一番!」と胸を張る心意気──。
立入さんの姿勢には、素晴らしいものがあります。

立入さん、長濱製作所のみなさま、
ありがとうございました!


なお、すでに会員さんのいよりんさんこと、
井寄奈美さんも、相前後して長濱製作所さんを訪れ、
【取材日記】を書いておられます。
こちらもぜひご覧ください!

■なにわの社労士発~「今日もこんなええことありました」 >>>



(編集部・酒井俊宏)




けいかいきゅうなな
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2009年06月08日(月)更新

【取材日記】伊那食品工業 塚越 寛さん ─2─

前回取材日記より続きます)

伊那食品工業会長・塚越 寛さんは
信念の人でした。

同社の実質的な創業者といえる塚越さんですが
ご本人の信念がそのまま、同社の企業風土に結びついている──
そう感じずにはいられませんでした。

つかごしさんに

同社の基本姿勢は、塚越さんがご著書、
『リストラなしの「年輪経営」』の中で述べ
そのタイトルからもわかるとおり、
着実に、木が年輪を刻むように、
少しずつ成長していく会社を目指すというものです。

なんのためか。
それはこの社是の実現のためです。
(↓応接室に飾られていたものです)

しゃぜ

塚越さんのおっしゃる「いい会社」とは
経営上の数字がよいだけでなく、
会社を取り巻くすべての人々から
「いい会社だね」と言ってもらえる会社のこと。

すべてのステークホルダーと
良好なウィン-ウィンの関係を保つことが
企業の永続につながるという発想です。

塚越さんの考える、一般にいわれる「良い会社」とは、
要約すれば売上至上主義、時価総額主義など、
往々にして社員の幸せを犠牲にする会社のこと。
当然ながら、そうした会社を目指す気はまったくないとのことです。

しゃない
(みなさん真剣かつ楽しそうに仕事をしておられました)

そのために同社と塚越さんが守り続けているのが、
「年功序列」の人事制度です。
機械的に横並びなのではなく、飛び抜けて優秀な人に対しては
抜擢人事はしているそうです。

年功序列の弊害は、高度成長期の終わりとともに
長く指摘されてきたことではあります。
それは、平たく言ってしまえば、
年相応に働かない(働けない)社員が多く出てきたということでしょう。

年功序列では、年相応に働かない人を甘えさせる結果になるということ、
それと企業側が人件費をコスト視する傾向とあいまって
多くの企業で成果主義が導入されたわけですが、
結果、さまざまな弊害も生じたというのが、
この10年あまりの人事考課制度の流れだったと思います。

では、同社の年功序列制度はなぜ成り立つのか。
塚越さんは次のような表現でお答えくださいました。

「みんなが、会社のため、周囲のみんなのために、
あるいは自分自身のために、毎日なにがしかの努力
をして高めていくような状態にある会社では、年功
序列が正しいに決まっています」


「人間、だてに生きていない。経験が積み重なって
いったら賢くなる、絶対賢くなる。どんな人でもね。
だから年功序列が正しい。別の角度から考えると、
子供が育ってきたら金がいるんです。いる時期があ
るんですね。年功序列じゃなくていわゆる成果主義
でやると、子供にお金がかかるのにお金がない人も
出てしまう。トンビがタカを生むこともあるでしょ
う。親父がダメでも子供は優秀ということはいくら
でもある。そういう子供たちが教育機会が得られな
かったら、国家的な損失です」


……うちの社員にトンビはいないけど、と付け加えて
このようにおっしゃいました。そういう塚越さんですから、
昨今の大企業のリストラには当然批判的です。

「雇用する責任というのは、会社を経営していくうえ
で最大の、一番基本的な責任です。それを放棄した会
社に明るい将来があるのか、甚だ疑問ですね」


そんな塚越さんの自慢は、社屋でもなく環境でもなく、
やはり社員のみなさんです。

この取材の日、いつもは車通勤だそうですが、
この日はたまたま、ご自宅から15分ほどの道のりを
歩いてこられたそうです。

「みんなが掃除している最中に来たわけです。凄まじ
いね。実際ビックリしました。社員が全員でやってい
る、それぞれが自発的に。すごいって思いましたね。
頼もしいかぎりです」


そうおっしゃる塚越さんご自身、
社員のみなさんと一緒に掃除をしておられるのを
取材前に周辺を散策していた私は見ています。

このような塚越会長の経営観や人生観は、
高校生の頃、肺結核を病まれた経験から来ています。
病から立ち直った塚越さんは、心底、
「働けるだけで嬉しい」
ということに思い至ったそうです。

職場環境を整えるのも、塚越さんにとっては
当然のことなのでしょう。
同社のオフィスには、マッサージチェアがあちこちに置かれ、
社員食堂も、渓谷に面したテラスがあったりと、
とても一企業の食堂とは思えません。

会社負担で一年おきに海外に社員旅行に行くのも、
なかなかにできることではなく、
もう何十年も続けているそうです。

このほかにも、「教育勅語」を研修に使われたり、
「ケチは悪循環の始まり」「利益なんてカス」
といった刺激的なフレーズが並ぶ、塚越さんのお話には
仕事であることをときどき忘れながら、聴き入ってしまいました。
記者冥利に尽きる、幸せな時間でした。

全部をご紹介したいのはやまやまですが、
塚越さんのインタビューは、
経営者会報7月号に掲載させていただきますので
ぜひ、そちらでもご覧下さい。

塚越さん、伊那食品工業の社員のみなさま、
ありがとうございました!


ろくがつごう
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2009年06月04日(木)更新

【取材日記】伊那食品工業 塚越 寛さん ─1─

先週末、経営者会報本誌7月号『永続企業になる!』の取材で、
長野県伊那市へ行ってまいりました。

伊那食品工業会長・塚越 寛さんへの取材です。

かいちょうさん

ご存じのかたも多いと思いますが、
塚越さんは、永続を志向し、急成長は避け、
少しずつ、着実な発展を果たすことを念頭に
経営をしておられます。

教育に力を入れ、「年功序列」を崩さず、
メセナという言葉が広まる前から、地域社会への貢献を
自身と自社に課してこられています。
最近、『年輪経営』という本もお出しになりました。
経営者のファンのかたも多いと思います。

まさに、日本的な価値観を大切にした経営で、
多くの企業にとって学ぶべき点が多い会社だと思います。

数年前、弊誌の「異能経営者がゆく!」で
取材をさせていただいたことがあり、
私がお目にかかるのは、2度目となります。

ふだんは、取材でお邪魔してすぐに
ここでご紹介することはあまりしないのですが、
(ある程度、整理して書く義務があると思いますのでそのようにしております)
あらゆる面で素晴らしい会社であることと、
その環境の素晴らしさに感動したこと、の2点から、
早々にご紹介したいと考えました次第です。

今回は、同社と、その周囲の環境の素晴らしさと
地域貢献の一端を、写真中心でご紹介したいと思います。

最寄り駅のJR飯田線・沢渡(さわんど)駅を下りて
歩いてみました。
同線・伊那市駅からタクシーを使えばすぐなのですが、
素晴らしい環境なので、おいしい空気を味わい、新緑の景色を眺めながら
お訪ねすることにしました。

沢渡駅を下りて。天竜川のほとりから撮影。
いなしです


沢の右手にある道を上っていくのですが、
同社の本社はなんと、この上流の左手にあるのです。
さわ

本社の手前の橋から、沢を見下ろしてみました。
さわを

本社の敷地は、塚越会長の方針で木々が豊富です。
森の中に会社があると言ってもいいくらいです。
ほんしゃ

窓枠には花が飾られています。
しゃおくに

朝、8時半過ぎ、社員の方々が、一所懸命、
掃除をしておられました。
そうじ

先にも述べたように、同社は、地域社会に貢献しようということで
さまざまな取り組みをしておられます。

その一環が「かんてんぱぱガーデン」の運営です。
和食、洋食、そばなどのレストランがあり、
同社が長年培ってきた「寒天」の美味しく、体によい食べ方や調理法を
楽しみながら味わえます。
庭園に売店も備えていて、いまではすっかり観光スポットになっています。
年間30万もの人々が、全国から訪れるそうです。

にわ

和食レストラン「さつき亭」。
さつきてい

こちらはおそばやさんです。
そば

洋食レストラン「ひまわり亭」。
にわさん

取材を終えたあと、ここでパスタをいただきました。
パスタも美味ですが、寒天を使ったサラダが絶品でした。
従業員さんの感じのよさが印象に残りました。

ぱすた

さらだ

売店では、同社の商品だけでなく、
地元の農家のかたの作った野菜なども直売しています。

ばいてん

ガーデンの敷地内には、地下深くからくみ上げられた井戸があり、
この美味しい水は、地元のかたに無償で提供しておられるそうです。
同様の井戸が、本社の敷地内にもあります。

いど


同社はこのような環境を一気にではなく、
少しずつ、整えてきたのです。
そこが素晴らしいと思います。

塚越会長は「お金は遣うためにあるんです」
おっしゃいます。

いま改めて脚光を浴びている
塚越さんご本人の経営観、価値観については、
次回、ご紹介したいと思います。

※続きはこちら >>>


(編集部・酒井俊宏)




ろくがつごう
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