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2008年06月05日(木)更新

【取材日記】シーン・メイキング 土屋昭義さん

記者としての性か、
つい“ドラマ”が期待できそうな会社を探してしまいがちなところが、
正直、私にはあります。

たとえば、家業を継ぐ、継がない、というケースでは、
肚を括って継いで、苦労を重ねられた人に、
つい肩入れしてしまうようなことです。

そうした先入観は、取材先を探すときにはある程度機能しても、
本当のドラマを見落としてしまうおそれが強いことを、
過日、ある社長さんに教わりました。

経営者会報6月号に掲載中である
「異能経営者がゆく!」の取材でおじゃまさせていただいた、
シーン・メイキング(浜松市)の土屋昭義社長が、そのかたです。

つちやさん

■シーン・メイキング ホームページ >>>


土屋社長は、お父上が始めた家業の電器屋さんを継がず、
地元のゼネコンに就職されます。
三十数年前ですから、現在のヨドバシカメラのように、
小売がメーカーサイドに対してある程度、
影響力をもち得るとは考えにくい時代です。

将来的には家業が構造的に成り立たないと思っていた土屋さんは、
お父上と1年限りと約束をして、同業他社に修業に出ます。
ご発言を一部、記事から引用します。

「約束の1年が経っても、やはり継ぐ気になれなかった。
私は父に『あと10年はもつかもしれないけど、それから
先はない。俺の人生だから、悔いのないよう、好きにさ
せて欲しい』と啖呵を切りました」


ゼネコンに就職した土屋さんは、
公共事業・談合頼みの体質のままではいつか行き詰まると、
会社に民間中心にシフトすべきだと進言します。
が、受け容れられず、独立を果たします。

土屋さんは、新工場や新店舗の展開を、
「成功報酬でいい」と、その会社の社長に代わって企画し、
設計・施工・集客までも手がけるというビジネスで、
おおいに成功しました。

しかし、それにおごらず、新たな展開に挑戦していかれます。
地方のゼネコンをネットワーク化し、大手に対抗するという試みです。
同社が培ってきたノウハウも公開し、現在、100社近い企業が
加盟しているとのこと。

詳しくは、経営者会報6月号を
お手に取っていただければと思いますが、
土屋さんは、創業30年近く経ってこの新事業に挑戦された経緯を
次のように振り返ります。これも記事から引用します。

「納得した人生、充実した人生を送りたい。そういう思い
を突き詰めていけば、現状に流されて生きるのは耐えられ
なかった。家業を継がなかったことと理由は同じです」

ちなみに土屋さんは、家業こそ継ぎませんでしたが、
亡きお父上のことを深く尊敬しておられます。
起業後もいまも、
「まず人のお役に立つ人間になれ!」というお父上の言葉が
支えになっているそうです。

継がなかった人にも継いだ人と同じくらい、ドラマもあり、
継がなかったゆえに、ご自身で作り上げた事業への責任感、
思い入れもまたひときわ、強いものがある──。
土屋さんにはそんな大事なことを教えていただきました。
ありがとうございました。

なお、土屋さんは、多彩な趣味人でもありました。
多忙な日常であるはずなのに、その合間を縫って
こんなに素晴らしい絵もお描きになるのです。

つちやさんえ

まさに、充実した人生を送っておられることが、
この絵から、たしかに伝わってきます。

(編集部・酒井俊宏)



けいかいごがつ
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