大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2007年10月24日(水)更新

【こんな社長さんに会ってきました】会社を潰す社長とは?

いつも素晴らしい方にお会いできて感銘を受け、
この仕事をしていてよかったなと思うことが多い私ですが、
たまに悲しい思いをするときもあります。

年に何十人と経営者の方に取材をさせていただいていると、
なかには会社を傾けてしまう人もおられるからです。

耐震偽装だとか昨今騒がしい食品の製造日の偽装だとかで
そうなってしまうのは自業自得。
消費者への裏切り行為である以上、論外です。
幸い、そういう人にはまだ、直接取材をしたことはありません。

このような例では、従業員の方たちも可哀想だとは思いますが、
悪いことだと知りながら黙って従っていたのだとしたら、
無条件にかばう気にもなれず、複雑な感情をもってしまいます。

これから述べるのは、そうしたケースではありません。
ご商売が思った通りに運ばず、傾けてしまったケースです。

傾けてしまう社長には、共通項のようなものがある気がします。
それについて、思うところを書いてみます。

多くの経営者の方、この経営者会報ブログの会員のみなさまにとっては
言うまでもないことかもしれませんが、
現場で感じ続けたこととして記してみたいので、どうかご容赦ください。

経営者会報本誌にはシリーズ告白という、創刊以来続いている連載があります。
危機に陥り、そこからリカバリーされた方に、お話をうかがうものです。
今は別の編集部員が担当していますが、
今年の夏まで数年間、この連載は私の担当記事でした。

登場された方は、その後、大きく会社を伸ばしておられる方が大半ですが、
残念ながら、再度危機に陥り、会社を畳む方も何人かおられました。

何がその差を生むのか。

まったくの私見ですが、危機を糧にできた方は、

「すべて自分が悪い」

という基本認識をもっておられたように感じています。

逆に、傾けてしまった方は、
取材時、危機に陥った当時のことをうかがうと、

「銀行が…」
「景気が…」
「元請けが…」


と周囲や環境のせいにする発言が目立っていました。

通常の取材でお目にかかる社長さんの口から、
こうした発言が出ることは、まずありません。

おそらく、経営というのは、日々、意思決定の連続で、
多くの経営者のみなさんは、すべて自己責任と肚を括って
決断をしていることでしょう。

それゆえに、自社をとりまく情勢についても、
曇りのない目で客観視でき、
適正な処置が取れるのだと思います。

潰してしまった何人かの方のお顔を思い出すと、
発想力も行動力もある方たちだったと思います。
だからある程度のところまで、会社を伸ばすことができた。

そう考えると、こと危機に当たってどう動けるかは、才能以前の問題であり、
才能を支え、そのもととなる部分にかかっているように思います。
それをも含めて才能といっていいのかもしれませんが……。

経営というものは、規模が大きくなったり、
事業が高度化していくごとに難しさが増し、
経営者に求められる能力も違ってくるとは思いますが、少なくとも、
自己責任だと肚を括って、事業に取り組んでいるのか否か──。

そこがまず最低限、求められる、
「社長の条件」であるように思えてなりません。

(編集部・酒井俊宏)




けいかい
■中小企業経営者のための羅針盤 月刊経営者会報
http://www.njh.co.jp/njs/keikai.htm
■ライフ&ビジネスアドバイザー 日本実業出版社
http://www.njg.co.jp/

2007年10月23日(火)更新

【こんな社長さんに会ってきました】マイスターエンジニアリング 平野茂夫さん

この「記者・酒井の日記」では、
取材直後の情報のみならず、過去、取材させていただいた
経営者の方に関するエピソードもご紹介しています。
 
今回は、マイスターエンジニアリング会長の平野茂夫さんをご紹介します。
平野さんには過去、対談や特集記事などで、何度かご登場いただきました。

同社は、ビル設備等のメンテナンスを中心に手がけられ、順調に成長。
「マイスター60」という、
60歳以上の人を雇用する別会社を立ち上げるなど、
高齢者活用について嚆矢といえる取り組みをしてこられたことでも有名です。

まいすたー

■マイスターエンジニアリングのHPはこちら>>>
http://www.mystar.co.jp/

創業者である平野さんは、
中国古典、とくに「大学」を社内教育のテキストにしておられ、
同社のホームページでは、平野さんの言葉で次のように記されています。
 
「明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、
先ずその国を治む。その国を治めんと欲する
者は、先ずその家を斉(ととの)う。その家
を斉えんと欲する者は、先ずその身を修む」。

これは、当社において経営の哲学としている
『大学』冒頭の一節です。ものごとの根源を
修身に置き、家庭の幸福も会社や国家の繁栄
も、まずは我が身を修めることから出発する、
言い代えれば、自らの主体性(パーソナルア
イデンティティー)の確立こそが、すべての
原点であることを示唆しています。

平野さんは、伝統的な儒教の考え方を、
非常に上手に経営に活かしておられます。
高齢者を雇用しようという試みも、
今63歳のご自身が50代にさしかかったとき、
年長の方を敬う心から出たものだと推察しています。

いつも背筋がしゃんと伸び、気骨と、
大きな優しさが伝わってくるそのお人柄に触れるたび、
こちらも力をいただくような、そんな気持ちにさせるかたです。

以下は新聞記事にも出ていて、
取材のときに平野さんに確認させていただいた話です。

何年か前、「格差問題」が騒がれだした頃、
平野さんが、某一流大学で講演したとき、
こんなことがあったそうです。
複数の学生に格差について発言を求めたとき、ある学生が
「勝ち組と負け組で格差がつくのは仕方ないでしょ。負ける方が悪い」
と言いました。

すると平野さんは、

「その考えは間違っている!」

と一喝。続けて、

「君たちは受験では勝ち組かもしれないが、だ
からといって自分のことばかり考えていては真
のエリートとはいえない。社会に出たらコツコ
ツ地道に努力して頑張っている人に目を向けな
さい。そういう優しさをもって欲しい」

とおっしゃったそう。

会場は一瞬、しーんと静まり、
その直後、拍手がわき起こったといいます。
 
平野さんは、上に立つ者は下の者の身になって考えるべきというお考えで、
そのことを徹底し、自ら実践してこられました。
真摯なお人柄から発する、実践者ならではの迫力が、
学生さんの心を打ったのでしょう。
私の大好きな経営者の一人です。

余談ですが、こういう立派な経営者の方には、
お忙しくて大変ではあっても、
どんどん社外の若い人の前でお話をしていただきたいものです。

(編集部・酒井俊宏)




けいかい
■中小企業経営者のための羅針盤 月刊経営者会報
http://www.njh.co.jp/njs/keikai.htm
■ライフ&ビジネスアドバイザー 日本実業出版社
http://www.njg.co.jp/

2007年10月19日(金)更新

【こんな社長さんに会ってきました】年功序列と「教育勅語」

何年か前に取材させていただいた、
ある地方の食品メーカーさんのことをふと思い出しました。

読まれる方の受け取り方によっては、
会社や社長さんにご迷惑がかかるかもしれませんので、
仮にA社としておきましょう。
そのA社の取り組みに関連して、
このごろ思っていることについて書いてみます。

A社は従業員数は100名ほど。多くの独創的な商品をもち、
何十年も連続して増収増益という立派な業績を上げています。
この会社では、基本的に年功序列の人事考課を行なっています。

「子供を大学に行かせられないような年収では可哀想です。
それは社会的な損失でもある。年齢相応の年収は必要です。
若い社員だって将来の生活設計ができます」

とは社長さんの弁。

A社では、年齢に応じた責任や義務を果たす姿勢を
強く社員に求めてきました。
ちょっと驚きましたが、社員教育の一環として
戦前の「教育勅語」の一部をテキストにしていました。

明治23年に発布された教育勅語に対しては、
様々な思想や立場からの意見がありますし、
アレルギー反応を示す人も少なくありません。
しかし、その社長さんは、

「戦前の日本人が大切にしていた公共心や道徳の
エッセンスが詰まっている」

と言っておられました。
個人的な見解として、私も同様に考えています。

A社の場合、「公」の精神を社員に強く求めており、
そのようにして培われた企業風土があったうえでの
「年功序列」堅持なのです。

A社の取材のあとで、労務問題に強い弁護士の方に、
なぜ年功序列が機能しなくなったか、お聞きしたことがあります。
その先生はこんなことをおっしゃっていました。
なるほどと頷きました。

「年功序列というけれど、昔だってタイムスパンが緩や
かなだけで、実は成果主義だった。長い間に実績を残し、
人望もある人が部長や役員になって、金銭面での待遇も
上がったわけです。高度成長期までは大量生産、大量消
費で、商品やサービスの寿命も長かった。そこでは「経
験」が大きくものを言い、経験に基づいた能力と処遇が
一致する必然性がありました。様々な意味で変化がめま
ぐるしい現在では、その必然性のバランスが崩れてしま
った。要は年相応の成果を出せない人がたくさん出てき
てしまったことで、年功序列が機能しなくなったのです」

もちろん、年功序列を盲目的によしとするつもりはありません。
働く側の意識全般も変わりましたし、
人事考課や制度の考え方もいろいろあって当然です。

ですが、どういった思想や制度の信奉者であっても、
年長者がその年相応以上の働きをすることを
期待しない社長さんはいないでしょうし、
年とともに自分の実力が上がることを喜ばないビジネスマンもいないはずです。

その意味で、A社の例は注目に値すると思います。
責任を全うする意識が全社員に徹底されていれば、
年をとっても、時代の要請についていくセンスや能力が
培われる可能性があることを示しているからです。

責任を自覚し、自分に負荷をかけることで、
かけた負荷のぶん、努力のぶんだけ、
人間の能力は伸びると思いますし、
部下や後輩に対して責任をもって指導にあたるとすれば、
指導する側にとっても多くの気づきを得る場になるでしょう。

素人考えで恐縮ですが、
A社の成功を見ていると、年功序列が成立しなくなった背景に、
日本人が元来もっていた美徳の喪失もあるのではないか、
と思えてきます。

さて、自分は年相応に働いているのか、働けているのか──。

40代半ばにさしかかってきた、われとわが身を振り返り、
自戒の念をあらたにしつつ、以上のようなことを思いました。

(編集部・酒井俊宏)




けいかい
■中小企業経営者のための羅針盤 月刊経営者会報
http://www.njh.co.jp/njs/keikai.htm
■ライフ&ビジネスアドバイザー 日本実業出版社
http://www.njg.co.jp/

2007年10月18日(木)更新

【ブログピックアップ】京都工芸・寺田元さん

「ブログピックアップ」では、
経営者のみなさんの書かれたブログの中から、
お薦めのブログをご紹介しています。

今回のお薦めブログは京都工芸の寺田元さんです。
会員さん同士の心温まるお付き合いが広がっているようです。
 
 *      *      *

こんにちは。【タオルはまかせたろ.com】京都工芸の寺田です。

夏前に私が外出中に「ヨコヤマさんの紹介で」と2度ほど営業に来られていた
会社がありました。

「ヨコヤマ?」 私にはピンときませんでした。

3度目に私と初対面したその営業の方は経営者会報を差し出しながら、「横山さんの紹介で・・・」っとおっしゃられてやっと合点したのです。

(続きはこちら)>>>
http://makasetaro.keikai.topblog.jp/blog/110/10006362.html

 *      *      *
 
寺田さんのブログには、
横山工藝の横山さんとお嬢様が
さっそくコメントしておられました。

会員のみなさま同士、ご商売を含めて
さまざまなおつきあい、交流が広がるようお手伝いするのが
私どもの当サイト発足時から変わらぬ願いです。

嬉しさのあまり、ピックアップさせていただきました。

(編集部・酒井俊宏)



けいかい10
■中小企業経営者のための羅針盤『月刊経営者会報』
ご購読はこちら>>>
http://www.njh.co.jp/njs/keikai.htm
■ライフ&ビジネスアドバイザー 日本実業出版社
http://www.njg.co.jp/

2007年10月18日(木)更新

【取材日記】WEBマーケティング総合研究所・吉本俊宏さん

昨日(10月17日)、経営者会報『注目企業研究』(12月号)の取材で、
WEBマーケティング総合研究所社長の
吉本俊宏さんにお話をうかがってきました。

これは、気鋭のライター・吉村克己氏による、
文字通り、注目に値する取り組みをしている企業及び経営者に
ご登場いただく長期連載です。

WEBマーケティング総合研究所では、中小企業に対して、
独自に作り上げた「ビジネスブログ」を使って
ツール面とコンサルティング面との両方から
販促に結びつけるお手伝いをしています。

ネットをリアルの販売や営業と切り離さず、あくまで会社トータルで
売上を上げるための場としているのが同社のスタンスです。

よしもとさん

吉本さんは都市銀行、大手シンクタンク勤務を経て独立。
あのアイワイバンク設立にも携わるなど、
一貫してシステムに関連した仕事をしておられました。

大企業に比べ人材面でハンディのある
中小企業のお手伝いをしようと独立したものの、
なかなか顧客は獲得できず、
個人で三〇〇〇万円もの借金を抱え、
一時は倒産を覚悟するなど、大変な苦労をされます。

その苦労が、吉本さんにとって財産になりました。
試行錯誤のすえ、独自のノウハウを見出し、
現在の顧客は、口コミを除けばすべてネットを通じて開拓。
集客のために苦労され、会得したノウハウを
顧客企業に提供し、大変喜ばれているというわけです。

なるほど、と思ったのは、
以下の吉本さんのたとえ話です。

「たとえば中国に初めて営業所をつくるなら、
所長にはエース級や役員級を置くはずですし、
いきなり大がかりにはやらず、少しずつ足も
とを固めていくはずです。HPも実はこの営
業所のようなもの。なのに多くの経営者が、
始める前から多くを期待し、『売れるHPに
してください』と業者任せにする。これは中
国での営業戦略立案を、現地で営業所を作っ
た建設業者にお願いするようなものです」


なんであれ、社長が内容を把握せず「丸投げ」にしていては
うまくいかないのは当然です。
しかし、普通の業務であれば、絶対に丸投げなどしない人が、
なぜかネットを活用する際は、このことを忘れてしまう傾向にあるのだそうです。

同社の具体的なサービスの内容については
以下URLをご参照いただければと思います。

ぶろぐでねっと
■WEBマーケティング総合研究所
>>>http://www.blogdehp.jp/

うかがった際、印象的だったのは、
社員のみなさんの、温かくも明るい、
それでいて強固なチームワークを感じさせる
雰囲気です。

過去、あるIT関連企業にお邪魔したとき、
社内に無機質な雰囲気を感じたことがありましたが
同社ではそんな気配はゼロ。

血を吐くような思いをしながら
「中小企業を助ける」という理念を貫かれた吉本社長に、
社員のみなさんが深く共感し、
同じ思いを抱いておられるからでしょう。

くわしくは、ちょっと先になりますが、
12月1日発売の『月刊経営者会報』12月号
お手に取っていただければと思います。

(編集部・酒井俊宏)



けいかい
■中小企業経営者のための羅針盤『月刊経営者会報』
ご購読はこちら>>>
http://www.njh.co.jp/njs/keikai.htm
■ライフ&ビジネスアドバイザー 日本実業出版社
http://www.njg.co.jp/
«前へ 次へ»
<<  2007年10月  >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31