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2012年08月24日(金)更新

【取材日記】ハウステンボス社長/エイチ・アイ・エス会長・澤田秀雄さん 



月刊ニュートップリーダー8月号で、
エイチ・アイ・エス創業者ハウステンボス社長澤田秀雄さん
ご登場いただきました。
 
ご存じの方も多いと思いますが、
地元財界の期待を担ってオープンした長崎県佐世保市のハウステンボスは
創業以来18年、赤字続きでした。

しかし澤田さんが社長に就き、
エイチ・アイ・エスグループとして2010年3月、支援に入ると、
翌期には奇跡的に黒字化を果たします。
本誌連載中の「小よく大を制す」でおなじみの福永雅文さんによる
澤田さんへのインタビューと、それに基づく解説記事とで再生の秘訣に迫っています。
 
澤田さんです。

 
(撮影/Photographer 山本信介)

 
■ハウステンボス >>>
■エイチ・アイ・エス >>>
 
 
澤田さんといえば、数々の新規事業を成功に導いた
伝説のベンチャー経営者ですが、
さすがにハウステンボスだけは無理なのではないか、
と危惧する声が内外で大きかったのは事実のようです。
しかし結果として、またも成功に導かれました。
 
ベンチャー経営者というと、豪快に夢を語るけれど、
緻密さにかけるイメージをもつ人は多いと思いますし、
そのことが綻びの原因となるといったケースも現実に見聞きします。

ですが、取材に同席してお目にかかった澤田さんは、まったくそのようではなく、
緻密で細心な配慮をされるかたとお見受けしました。
より強い印象として残ったのは、とにかく笑顔を絶やさない、
非常に明るいかただということです。
 
天性そうなのでしょうし、
努めてそのようにふるまっておられる面もあると拝察しますが、
意気消沈しがちだった当時のハウステンボスの社員の方々のやる気を引き出したものを、
もしも一つだけ挙げるとするなら、この明るさだったのではないか。

誰だって「この親分についていったら、いいことがありそうだ」と思える人に、
実際ついていきたいはずです。
多忙な身でありながら、月のうち半分は
ハウステンボスにおられるということも大きいのではないかと思いました。
 
経営者のかたなら、先見性、戦略の立て方、
社員の方々に対する接し方などなど、澤田さんの手法や考え方は
おおいに参考になるはずです。

厳しい状況にあっても、全社挙げて挫けることなく、
成果を上げるべく導くことのできるリーダーシップとはなにか、
その要諦を感じ取っていただける本記事、ぜひ、ご一読ください。

ハウステンボスに直に足を運ばれるのもよいでしょう。
きっと、澤田さんの経営を、体感できることと思います。
 
 
(編集部 酒井俊宏)
 



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2012年07月19日(木)更新

【取材日記】アタゴ社長・雨宮秀行さん


月刊ニュートップL.(リーダー)2012年8月号掲載予定の
特集『飛躍に導く トップの決断』の取材で、
アタゴ(東京都港区)・雨宮秀行社長にお話をうかがってきました。 
 

 
雨宮さんです。
(撮影・カメラマン柚木裕司氏)
 
■アタゴ >>>

 
トップの仕事とは、究極的には決めること、
すなわち「決断」なのではないか、と思います。
 
とすれば、トップの「決断力」が
その企業の将来を左右するといっても過言ではないでしょう。
 
雨宮さん率いるアタゴは「屈折計」専門のメーカーで、
とくに小型の製品において、世界中で高い評価を得ています。
 
規模こそ大きくはありませんが、世界に1000以上の代理店をもち、
米国、中国、タイ、インド、イタリアなど世界各地に支社をもっています。
 
そのほとんどは、2006年に三代目社長として就任した雨宮さんが、
まだ課長だった時代から
会社の期待を背負って開拓したものです。
 
どういったところと組むか、誰と組むか。その決断の繰り返しで、
しかも「基本的に迷わない」で、海外拠点を切り拓いた雨宮社長は、
大変僭越ながら、三代目として理想的な経営者だと思います。
 
決断にはスピードが求められます。
しかし、なかなか決められない経営者も少なくないようにお聞きします。
判断が難しいのは、どのような案件であれ、リスクがつきものだからでしょう。
ゆえに、多少のリスクは受け止める胆力が必要になります。
 
創業経営者で、会社を家業から事業に成長させたような人は、
リスクを取る訓練を実地にふんでいて、鍛えられています。
その経験がもちにくい二代目以降の経営者は、
どのようにして自己を鍛えていけばよいのか。
 
詳しいエピソード、そして雨宮社長の決断に対する哲学については、
ニュートップリーダー8月号をご一読いただきたいと思いますが、
雨宮社長の若い前半生に、ヒントはあります。
 
自ら望んだ旅とはいえ、大学生のとき、サハラ砂漠で行き倒れ、死にかけるのです。
もちろん、九死に一生を得たからいえることかもしれませんが、
この無謀な旅が、雨宮社長の中に肚の座りを生んだことは間違いないようです。
 
経営の現場でなくとも、経営者にとって必要な資質を鍛える場は
ご当人次第で得ることができるのだと思った次第です。

 
 
(編集部 酒井俊宏)
 
 
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2012年04月04日(水)更新

【取材日記】日本マンパワー社長・加藤智明さん

 
 
過日、本誌『月刊ニュートップリーダー』の取材で、
日本マンパワー・加藤智明社長にお目にかかってきました。
経営戦略を扱う記事としてご好評をいただいている、
ランチェスター戦略コンサルティングの第一人者、
福永雅文氏の連載「小よく大を制す ビジネス兵法」の取材です。
 
日本マンパワーさんは、
もともと人材紹介業と教育業を柱にしていましたが、
現社長・加藤智明さんの指揮のもと、
経営資源をキャリア開発支援に絞って集中して、
それが見事に奏功し、強い会社になっていきます。
 

加藤さんです。
 
■日本マンパワー ホームページ >>>
 
 
オーナー経営者にご登場願うことの多い本誌ですが、
加藤さんはいわゆるサラリーマン社長です。
 
創業者に見込まれ、最初に勤めた会社から日本マンパワーに転じ
入社したのち独立。
その会社を軌道に乗せたあと、別の会社に招かれ副社長として活躍しますが、
招いた側の金銭トラブルがもとで結局、会社をたたむことになります。
そんな経験をしているとき、
日本マンパワーの創業者に声をかけられ「出戻った」のだそうです。
 
面白いのは、本文にあるとおり、
「一度やめた人間が元の通りに戻るのはしめしがつかない」ため、
契約社員として戻ったこと。
 
なんとそのまま管理職、取締役、そして社長へとのぼりつめるのです。
そして、加藤社長はキャリアカウンセラー養成事業を大きな柱と位置づけ、
戦略的に絞ったことで同社は堅実に成長していきます。
 
中小企業においてオーナー経営者でないトップが
うまく会社を成長させたという例は、正直それほど聞きません。
 
しかし、加藤社長に間近でお話をうかがっていると、エネルギッシュで、
強い当事者意識が立ちのぼっているように感じられました。
会社というより「事業運営に対するオーナーシップ」とでもいえばいいのか。
 
大変僭越ながら、天性、経営者であられるように感じましたし、
先代さんが見込まれた理由がわかったような気がしました。
 
この健全なオーナーシップこそは、規模の大小を問わず、
現実にオーナーであろうとなかろうと、
トップが備えておかなくてはならない重要な
資質・要件なのではないかと思った次第です。
 
加藤さん、ありがとうございました!
 
 
 
なお、本連載はコンサルタント・福永雅文氏ならではの記事で、
ご好評をいただいています。
 
企業が生き残るうえでの戦略面でのヒントを分析的に記しながらも、
読み応えある読み物にもなっているからでしょう。
 
歴史にも造詣が深く、社名を「戦国マーケティング」と
名づける福永さんだから描ける本連載、
ぜひご一読いただきたいと思います。
 
 
■戦国マーケティング ホームページ >>>
 
 
(編集部 酒井俊宏)
 
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2012年01月19日(木)更新

【取材日記】スターホーム 星 武司さん



特集「会社とトップを強くする失敗学」の取材で
何人かの社長さんにお話をうかがってきました。 
その中のお一人が、神奈川県逗子・葉山エリアで、
おもに注文住宅の設計・施工・販売を手がけるスターホーム社長の星 武司さんです。
 
 
 
星さんです。
 
 
 
 
同社本社屋。レストランだった物件をリフォームした、
同社のセンスとお仕事ぶりがよくあらわれた素敵な建物です。
 
■スターホーム >>>
 
この特集はタイトルが示すとおり、経営トップが、
失敗からいかに学ぶかを示すのが趣旨です。

果敢に挑戦していれば、経営に失敗はつきものです。
いまの時代、挑戦しないことこそ、最大の失敗でしょう。
 
大切なのは、同じ失敗を繰り返さないこと。失敗を活かすことでしょう。
つまり、事業のプラン、ビジネスモデルをブラッシュアップする。
だけでなく、事業や経営の真髄のようなものをつかむ。
ご自身の器を大きくしていく糧にする。
そういった活かし方ができるなら、
失敗はどんどんすべきともいえるのではないでしょうか。
 
星さんは失敗をきっかけに、何を学ばれたのか。
詳しくは、2月1日発行予定のニュートップリーダー2月号
ご覧いただきたいと存じますが、一部、ご紹介します。
 
二代目として事業を軌道に載せた星さんは、こうおっしゃいます。
 
『少々の成功に酔い、自分を見失ってしまいました』
 
年商2億円だった会社を就任数年で四倍にされたそうで、
無理からぬ面はあったと思いますが、
それを可能にした高い要求水準と拡大路線に社員は疲弊し、
停滞しだします。

クレームも増え、星さんは心身を病み、
呼吸困難のような症状もでたそうです。
 
そこからがすごいのですが、息ができないなら、
いっそ息をせざるを得ないようにしようと、
家の近所を数キロメートル、毎朝ランニングし始めるのです。
そして、走ったあとは瞑想する。
 
3か月ほどが過ぎたとき、
星社長はなぜ自分が幸せになれないのかがわかったそうです。
自分の成功意欲によって、本来もっていたはずの志が曇り、
自分自身を汚(けが)していた。そのことに気づいたのです。
 
そう気づいて、改めて抱いたのは、社員のかたへの感謝の念だったそうです。
そこから星さんも同社も生まれ変わったといいます。
 
一つの特集を組む際、事例ごとの結論部分が
似ることはよくありますが、
今回は、「自責」という言葉がカギであり、大きな共通項になりました。
 
なお、一口に失敗と言っても、致命傷になる大きなものもあります。
智者は歴史に学ぶといいますが、他者や先人の体験を己のものとするうえで、
本誌のような経営誌が果たせる役割は小さくはないと思います。
本誌は、経営者の内面を臨場感とともに描くことを、
編集の大きな方針に据えています。
 
疑似体験と申しますか、本誌を手に取ることで学んでいただけるよう、
参考度の高い事例を、ご本人の思いを掘り下げて描いていくことに、
よりいっそう力を入れていきたいと感じた特集でした。
 
一個人として、一人の管理職として、
重要な勉強をさせていただきました。
 
星さん、ありがとうございました!
 
 
(編集部 酒井俊宏)
 
 

 
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2011年12月28日(水)更新

【取材日記】山水閣 片岡孝夫さん

月刊ニュートップL.(リーダー)2012年2月号
特集「『高い』のに繁盛する会社」の取材で
栃木県那須町の温泉旅館・山水閣に邪魔し、
社長の片岡孝夫さんにお話をうかがってきました。 



 
片岡さんです。(撮影・山本信介)

 
この特集の趣旨は、高付加価値な事業を追求している
企業の具体例を通じて、価格競争などの「消耗戦」から距離を置き、
独自路線を歩んで成功するためのヒントを、
読者のみなさまに示すものです。
 
山水閣さんは別館まで含め、30前後の客室があります。
片岡孝夫社長によれば「稼働率は7割程度に抑える」とのこと。
かつては100%を目指していたそうですが、
行き届いたサービスを実現するにはそのくらいが理想で、
できれば隣の部屋にほかのお客さんがいないくらいにしたいそう。
 
高級路線ではサービス過剰な感のある旅館業にあって、
同館では贅肉をそぎ落とし、それでいて行き届いたサービスを実現しています。
 
たとえば客室係の客室への出入り頻度は意図的におさえる。
女将さんは置かずに、全従業員に自分たちが主役、という意識を徹底しています。
 
那須高原という立地もあり、大いにリフレッシュできる宿として人気で、
数か月先まで予約で埋まっているそうです。
 


(撮影・山本信介)
 
■山水閣 >>>
 
宿そのものの素晴らしさは
このホームページからも十分うかがえます。
 
詳しくは本文をご一読いただきたいと思いますが、
特筆したいのは同館は10年前まではごく普通の旅館で、
赤字続きで危機的な経営状態にあったということです。
 
当時、家業を手伝い始めた片岡社長は、たたむ方向で考えていました。
しかしある出来事をきっかけに翻意し、
すべて自分の問題として全責任を背負うと決めます。
そこから同社の躍進が始まります。
 
片岡社長が経営者としてどう生きるかを模索し、
答えをつかんでいく過程と同館が見違えるような宿になっていく過程は
僭越ながら、明らかに重なっているように感じました。
 
同特集にご登場の各氏に共通していますが、
中堅・中小企業における経営とは、
トップその人が経営者としてどう生きるか、人としてどう生きるか、
そのあらわれにほかならないと思います。
 
お客さん、エンドユーザーは、
サービスや製品を通して表現される経営者その人の、
哲学や行動の支持者なのでしょう。
 
 
 
(編集部 酒井俊宏)
 
 
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2011年12月15日(木)更新

【取材日記】しまうまプリントシステム 永用万人さん


過日、月刊ニュートップリーダー2011年12月号の連載記事、
「小よく大を制す ビジネス兵法」の取材で
しまうまプリントシステム・東京本社にお邪魔し、
同社社長の永用万人(ながよう・かずひこ)さんにお話をうかがってきました。 
 

 
永用さんです。
(撮影・Photographer 山本信介)
 
 
■しまうまプリントシステム ホームページ >>>
 

 
同連載は、ランチェスター戦略コンサルティングの第一人者、
福永雅文さんが、 規模は小さくとも、戦略性をもち、
大手に伍して闘っている 企業の経営者に取材し、
福永さんの視点で記事をまとめていただくものです。 
 
■福永雅文氏 戦国マーケティング ホームページ >>>
 
詳しくはぜひ現在発売中の
ニュートップL.(リーダー)12月号を 
ご一読いただきたいと存じますが、
少しご紹介しておきましょう。 
 
一般的に、小さい会社が価格競争で勝つのは難しい、というのが相場です。
しまうまプリントシステムは社員数40名。
競争の激しい写真プリントサービス業界にあって、
「プリント1枚5円」を掲げ、急成長中です。
同社は「コスト競争と差別化の両方を追いながら勝てる仕組みを考え、
成功している希有な企業」(福永氏)なのです。
 
ネットのみで受注し、すべて鹿児島県日置市の本社ラボで出力。
配送は宅配便を使用します。
 
データを渡してその場ですぐ仕上げられる業者は多いですが、
実は多くの人はそこまでのスピードは求めておらず、翌日で十分。
しかも紙焼きで残すのは多くはL判です。
 
もともとソフトウェアのシステム開発を手がけてきた永用さんは、
そのニーズを見てとり、2007年に創業します。
 
徹底的に絞り込むことで、他社にない低価格を実現、
いまでは月間1300万枚以上(2011年10月末時点)を
出力するまでになりました。
 
同社の工夫は、いわれてみれば「なるほど!」なのですが、
現実に商機を確信し、挑戦できる人は多くはないと思います。
そして、大いなる成功を手にする人物には、必ず純粋なところがある、
と私は強く感じています。
 
言葉を選びつつ明るく自社の事業を語る永用さんからは
「純粋な成功意欲」が伝わってきました。
そういう人だからこそ、気づき、動けたのではないか、そんな気がします。
 
アップルコンピュータ創業者のスティーブ・ジョブスは、
人格的にはいろいろ問題があったような評価もありますが、
純粋な成功意欲が原動力となっていたように想像します。

つまり、そこにチャンスがあり、やってみなければわからないけれど、
自分たちにはそれを可能にするセンスや技術力、バイタリティがある。
そしてそれは必ず世の中の役に立つ、だからやる──そんな意欲です。
 
鹿児島県日置市は、実は永用さんの生まれ故郷。
「本社とラボを置いて、ふるさとで雇用を生み出したのですね」
とおたずねすると、
「土地勘があったし、土地代が安かったから」と、
照れくさそうに笑っておられました。
 
スマートフォンのカメラ機能がどんどん向上していますし、
今後、ネットですぐプリント、という消費行動を取る人は
増えていくように思えます。
 
ネットで受注して、オペレーションは地方都市で行なう。
地域活性化のモデルのような事業だと思いました。
こういう社長さん、企業にこそ、
勝ち抜いていただきたいと思いました。
 
 
(編集部 酒井俊宏)
 
 

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2011年08月19日(金)更新

【取材日記】寒梅酒造 岩﨑隆聡さん

前回に続きまして、月刊ニュートップリーダー
(=旧誌名「経営者会報」)9月号
の取材で
お話をうかがった社長さんのことを記します。
 
仙台市の北、大崎市の古川地区は“酒どころ”として知られています。
この地の蔵元・寒梅酒造の代表で、
ご自身も杜氏を務める、岩﨑隆聡さんにお話をうかがってきました。
 

 


 

■寒梅酒造 >>>
 
同社の銘柄は宮寒梅
東北地方でも指折りの人気を誇ります。
 
その場で購入し、あとで冷やしていただきましたが、
馥郁(ふくいく)とした香りの、とても美味しいお酒でした。
一口呑んで大ファンになりました。
 

 
大津波による被害は、もちろん凄まじいものがありますが、
大地震そのものによる被害も甚大です。
 
古川地区は震度6強を記録。
寒梅酒造さんでも相当の損害が出ました。
 
上の写真にもあるインタビュー場所となった社屋は、
さほど被害はなかったそうですが、
裏手にあった酒蔵は崩壊。
 
瓶詰めしたばかりだった製品の
ほとんどが割れてしまったそうです。
 
寒梅酒造さんは綺麗な小川から近いところに建っています。
その小川の土手にあった道路が崩れてしまい、
取材当日もまだ工事中のため通行不能で、
カーナビの指示ではなかなかたどりつけませんでした。
 

岩﨑家は、もともとこのあたり一帯の大地主さんでした。
岩﨑さんは蔵元を始めてからは四代目で、
大地主としては「二十代目は超えていると思います」
とのことです。
 
同社ではネット通販より、いまも通常の販売ルートに力を入れているそうです。
 
岩﨑さんはこうおっしゃいます。
ご立派だと思います。
 
「うちは問屋さんや小売店さんに大きくしてもらった
酒蔵なんです。その恩返しの意味もあるし、皆で生き
残っていきたい。うちだけよければいいっていう考え
はあり得ない」
 
下の写真は、ご自身が所有する稲田です。

 
こういう方たちこそ大地主だったわけです。
いわゆる農地解放は「よいこと」という文脈で
語られがちですが、本当にそうなのでしょうか。

その土地に責任をもち、働く人たちに目配りをしていた
地主さんたちの末裔が岩﨑さんのようなかたなのではないか、
と思うのです。
 
さて、岩﨑さんには、立派な跡継ぎの方がいらっしゃいました。

娘の真奈さんと、そのご主人の健弥さんです。
真奈さんはまだ26歳。ご主人も同い年です。
 

 
ご夫婦で、若者に好まれる日本酒、
「一杯で旨い酒」造りを目指していかれるそうです。
陰ながら応援したいと思います。
 
岩﨑さんも、先の山内さんの記事でご紹介した、以下のファンドを利用しています。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
 
■セキュリテ被災地応援ファンド >>>
 
 





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2011年08月18日(木)更新

【取材日記】 ヤマウチ・山内正文さん

再三、この場でお知らせしてきました通り、
月刊ニュートップリーダー(=旧誌名「経営者会報」)
9月1日発行9月号の取材で
ライター・吉村克己さんと一緒に東北を回ってきました。
 
自宅も会社も失うような苦難のなかで、それでも意思を強くもち、
再起をはかる経営者のみなさんの奮闘ぶりをレポートした
「立ち上がる被災企業 復興への途(みち)」と題した記事は、
ぜひみなさんに、ご覧いただきたいと思います。

そのようにしてご紹介することが、
弊誌なりの支援であるとも考えています。
 
発行に先立ちまして、
ご登場いただいた経営者の方の素顔をご紹介します。
今回は、株式会社ヤマウチ山内正文さんです。
速報的に一度、ご紹介しましていますが、
改めて記したいと思います。

山内さんは、津波被害の大きかった南三陸町・志津川で
鮮魚店・鮮魚加工業を長年営んでおられます。

 

■ヤマウチ(山内鮮魚店)>>>
 
ご覧の通り、明るく元気でエネルギッシュな方でした。
ご家族も社員のみなさんも全員無事だったとはいえ、
お店、ご自宅、加工場と、すべて流されてしまったというのに……。

むしろ、取材に訪れた私たちが、元気をもらった格好になりました。
 
大津波が町を襲ったとき、
山内さんは高台にある志津川中学校に避難していました。

町が呑み込まれるさまを、呆然と見下ろすしかなかったといいます。
生まれ育った町がすっかり呑み込まれてしまうまで、
わずか10分くらいだったそうです。
 
志津川中学校は、そのまま避難所になり、
偶然、トラックの運転手さんが魚を満載した車ごと避難していたため、
同じように避難していたお寿司屋さんらと一緒に腕をふるって、
煮たり焼いたり、さらにホタテや牡蠣入りの雑炊まで
被災された人たちにふるまって、大いに喜ばれたそうです。
 
しかも場所が場所でしたから、子供がたくさんいます。
 
山内さんは皆で子供の面倒をみようと周囲の大人に呼びかけて、
避難所に自治会をつくったそうです。
 
さらには南三陸町の復興をはかるべく、
「福興市(ふっこういち)」の実行委員長にも就任されました。
このイベントがまた素晴らしい!
 
■福興市・公式サイト >>>
 
実は、ヤマウチでは、高台で工事中だった
冷凍庫兼工場だけは無事でした。
 
現在は工事を再開し、ここを拠点に、
山内社長はご家族のみなさんや社員さんとともに
再帰に向かって歩んでおられます。
 


長年経営誌の編集を手がけてきて、私なりに考え感じるのは、
実はリーダーは、平常時はそこそこ・ほどほどに何事も、
部下に任せられるなら任せてにこにこしているのがよくて、
リーダーシップとは、危機や窮地でこそ、
その真価が発揮されるものだということです。
 
とはいえ、このたびの震災は
危機と形容するのもはばかられる大惨事です。

こういう状況にあって、なすべき行動を見つけ、
そこに向かって動くことのできる発想力と行動力、
人が信じてついてくる人間性と明るさをお持ちの
山内さんのような方は、天性のリーダーなのだと感心します。
 
山内さんはこうおっしゃいます。
 
「復興には早くて五年、まあ一〇年はかかる。その間は
好敵手だった地元の同業者とも休戦協定だと言って申し
合わせている。抜け駆けはなし(笑)。みんなでよくな
って、この街の復興の力になりたいからね」
 
なお、山内さんのところもですが、
このたびの震災で被災し、
以下のファンドを利用している企業がかなりあります。
 
こうしたファンドを通じた支援も素晴らしいと思います。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
 
■セキュリテ被災地応援ファンド >>>
 
 
 





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2011年07月27日(水)更新

【取材日記】 被災企業・復興への道③気仙沼

7月18日の気仙沼です。
栄えていた港町は、いまはこうなっています。

 

 

 

 

地盤沈下の影響で、かなりの土地が冠水してしまっています。
港界隈は、信号も消えたままです。

かなり港から離れても、船がこうした状態で、
そこここにありました。

報道などでこういった光景を目にしてはいても
やはり現場で目の当たりにし、見上げ、見回してみると
その衝撃は、想像をはるかに超えていました。
ほんとうに、絶句します。


南三陸町へいく途中、あの松島を通過しました。
絶景で知られる松島ですが、私は初めてでした。

地元の牛タン屋さんで食事を取り、
お店の人に聞くと、一階の床上、
私たちが座っている目線の上まで津波が来たそうで、
壁には、海水による横一直線に染みがありました。

他の地域に比べると
いわれるように、島々が緩衝作用をもったようで、
被害は比較的少なかったようです。
観光客もけっこう訪れている印象でした。

でも、程度問題、ではあります。
営業を休む旅館やレストランには、建物が半壊以上の状態の
ところも少なくありません。

町の人からは、「でも、もっと悲惨な人たち、町がたくさんあるから」
という声も聞かれました。
東北人のみなさんは、どこまで辛抱強いのでしょうか・・


次回の取材日記では、いよいよ地元の社長さんたちを
ご紹介していきます。





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2011年07月22日(金)更新

【取材日記】 被災企業・復興への道②南三陸町

被害の甚大だった南三陸町です。
人々の頑張りで、道路は通れるようになっていますが・・



お供えものをするスペースがあり、
お線香が焚かれていました。
私も手を合わせました。

各地でこうした「遺構」を
共通の記憶として風化させないためにこのままずっと残す、
といった議論もあるようです。

被災地のこと、被害状況のことは
皆で共有しなくてはならないし、風化させてはいけないと
思いますが、別の手段があるようにも思います。




津波の脅威を物語る、
クルマが乗ったままの建物はあちこちに見られました。

第一波が満ちていた時間は、
地元の人におたずねすると、10分間くらい。
1階部分は水浸しになるのは覚悟していたけど、
まさか、あれほどとは……ともおっしゃっていました。
 

 


某コンビニエンスストアの店舗です。

自衛隊、警察、消防、さらにボランティアのかたへの
謝意を示す、こうした表示や看板があちこちにありました。

警視庁の機動隊の人たちが、
ご遺体の捜索に携わっているとおぼしき場面にも遭遇しました。

福島の原発で処理にあたっておられる人々もそうですが、
ほんとうに多くの方がまさに体を張って、
捜索や復旧に携わっておられます。
頭が下がります。

仕事をもっている人間は、まずその仕事をきっちりやることだ、
と思っていますが、そのうえでこうしたボランティアに励む人も
多いと思うと、本当に頭が下がります。


南三陸町だけではありませんが、
宮城県内、そして県外からも
多くのボランティアの方がやってきています。

高台にある、体育施設に町役場機能を移し、
その敷地内に上の写真の、ボランティアセンターが
設置されています。

周辺の道路や空き地には、ボランティアのかたがたが
自分で設置した宿泊用テントがおびただしい数にのぼっていて
なんともいえない心強さを感じました。

実は行きの新幹線車内も、
上野で朝7時台の早い列車に乗ったにもかかわらず、
満席状態でした。若いボランティアの方や、なかには
母娘とおぼしき人たちもおられました。

少しでも東北でお金を落とそうという風情の、
初老のご夫婦なども多いように思いました。

東北新幹線は、北関東などへの取材で
よく乗りますが、指定席であれほど混んでいたのは
記憶にないことです。

さて、あろうことか、先日、首相の座にある人は、
なでしこジャパンの澤穂希選手に、
「これから間に合うかわからないけどリーダーシップを学びたい」
と言ったそうです。もはや絶句するほかありません。

澤さんはもちろんすばらしい。
なでしこジャパンもすばらしい活躍でした。

が、いまこの状況下で、
政治のトップに立つ人物が言うべき台詞ではないことは
いうまでもないでしょう。

政治の空白が埋められたのなら、
これほど犠牲的精神をもつ人が多いのですから、
復興は加速度的に進んでいくのではないか、と思うのです。




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『月刊ニュートップリーダー(L.)』(前身は「経営者会報」)編集部にて社長の取材記事を担当。十数年の間に800名以上の経営者に取材、多くの経営者に感銘を受けた経験から、「日本を支えているのは中小企業とその経営者」と確信し、敬意を抱いている。『経営者会報ブログ』サイト編集部員も兼ねる。

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