酒井俊宏の「こんな社長さんに会ってきました!」 | 経営者会報 (社長ブログ)
「経営者会報ブログ」&「ニュートップリーダー」編集記者・酒井俊宏の「こんな社長さんに会ってきました!」
【取材日記】ソウル紀行(5)
いうまでもなく、
日本と韓国はある期間、“一つの国”でした。
どういう意図があってのことなのか(だいたい想像はつきますが)、
中学や高校の日本史の授業では、そのあたりは
妙に駆け足で進み、あるいはトバされ、
学校できっちり教わった記憶というのが
私にはありません。ほとんどの人が同じ思いでしょう。
戦前の日本を評価しようが批判しようが、
なにが起きたかを知らなくては、
どのようなスタンスであれ、取りようがありません。
私の場合、歴史に興味があって、
高校生くらいからは近現代史の本に目を通してきました。
日本が統治していた時代の朝鮮半島は、おそらくこうだったろう、
という自分なりの考えは固まっています。
そんな私ですので、せっかく韓国へ行けるのだから、
日本統治の痕跡や、巷間いわれるほど、韓国の人たちに「反日感情」があるものなのか、
それやこれやを少しでも体感したいという思いを、
無意識に抱きつつ、歩いていた面もあります。
これは、日本統治時代、1925年竣工のソウルの旧駅舎。
造形的にも素晴らしいものでした。
東京駅の赤煉瓦駅舎と似ています。
誰の手による設計かは、東京駅の設計者・辰野金吾とする説と
同時代に辰野を支えて活躍した塚本靖とする説があるそうです。
●戦前派の御老人と出会う
パジュブックシティへ視察に行った帰途のバスの中で、
個人的には、この旅のハイライトといえる出会いがありました。
戦前の日本の教育を受けた御老人と出会ったのです。
バスに乗り込んだ際、
運賃箱にお金を入れたときに出たお釣りが自分のものと思わず、
放ったらかしに通り過ぎた私に、身振り手振りで
「あなたのものだよ」と示してくださったのが、
前のほうに座ってらした、この御老人でした。
思わず頭を下げると、御老人は笑みをたたえながら、
ご自分の隣の空席を指しつつ、
「シッダウン」とおっしゃいます。
素直に従うと、御老人の口から、ゆっくりとした口調の綺麗な日本語が。
「日本からいらしたのですか?」
「お仕事はなにをなさっていますか?」
そんな質問に答えていくうちに、だんだん打ち解けてきます。
「日本では老人を大切にしていますか、敬っていますか?」
そう思い、行動している人は沢山いると思いますが、国や政治家からはあまりそういう姿勢が伝わってきません……と答えると、
「そうですか。韓国も同じですね」
御老人は、日系企業の石油関係のプラント建設の現場で長く働いておられたそうで、
中東などへも行かれたといいます。リタイア後は投資などで成功されたとのこと。
あとでお年をうかがうと、79歳。
15歳まで日本の教育を受けたことになります。
真面目に働かれたことを証明するような、
節くれだった手をしておられました。
しばし世間話のようなかたちで話をするうち、
よければ、名刺をください、と言われ、お渡ししました。
「酒井さん、ですね。私は南(ナム)と言います。日本式に
ミナミと呼んでください」
かなり打ち解けた気がした頃合いで、私は次のような質問をしてみました。
「日本人や日本のことをどう思っておられますか? お嫌いですか」
御老人はすぐ笑って首を横に振りつつ、こう答えました。
「日本人だから嫌いなんてことはない。韓国人だって日本人
だっていい奴がいれば悪い奴もいる。それだけのことだよ」
そのあと、御老人はぽつりとこうおっしゃいました。
「……酒井さん、日本にサムライはいまもいますか?」
ハートやマインドという意味でなら、そういう人はいます……と答えてから、
「戦前はそういう日本人はたくさんいたのですか、学校の先生とか」と訊ねると、
遠くを見る眼差しで何度も頷いておられました。
そのうちに、「名刺をもう一枚ください」と言われ、お渡しすると、
御老人は、そこにご自宅の電話番号を書いてくださいました。
「私の家のほうは魚が美味しいんです。美味しいどぶろく、
マッコリね。美味しいどぶろくがあります。今度また韓国
へいらっしゃることがあったら、必ず連絡をください。歓
迎しますよ」
なんだか、鼻の奥がつんとしてきて、
泣きそうな気分になりました。
御老人はこんなこともおっしゃっていました。
「日本の男は真面目なのはいいですが、細かすぎる。もっ
と大らかに生きたほうが幸せなのではないですか。お酒も
ね、こんな小さな器で(と、お猪口の形をつくって)飲む
でしょう。私ら韓国人は、どぶろくをこういうどんぶりで
ぐいっと飲む。最高ですよ。何杯も飲んで、そのうち、首
ががくっとするまで飲む」
そう言いながら、なんとも楽しそうな様子で、
がくっと首を前に傾ける。
最初に掲載した写真は、このやりとりのあたりでご本人に許可を得て、
撮らせていただいたものです。
最後は終点でともにバスを降り、握手をして別れました。
一緒だったのは、30分ほどの間でしたが、
2、3時間ほどにも感じられ、忘れられない思い出になりました。
あるいは韓国滞在中、最も濃密で、貴重な時間だったかもしれません。
いつかまた、韓国を訪れる機会があったら、
必ず御老人のお宅を訪ねてみるつもりです。
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日本と韓国はある期間、“一つの国”でした。
どういう意図があってのことなのか(だいたい想像はつきますが)、
中学や高校の日本史の授業では、そのあたりは
妙に駆け足で進み、あるいはトバされ、
学校できっちり教わった記憶というのが
私にはありません。ほとんどの人が同じ思いでしょう。
戦前の日本を評価しようが批判しようが、
なにが起きたかを知らなくては、
どのようなスタンスであれ、取りようがありません。
私の場合、歴史に興味があって、
高校生くらいからは近現代史の本に目を通してきました。
日本が統治していた時代の朝鮮半島は、おそらくこうだったろう、
という自分なりの考えは固まっています。
そんな私ですので、せっかく韓国へ行けるのだから、
日本統治の痕跡や、巷間いわれるほど、韓国の人たちに「反日感情」があるものなのか、
それやこれやを少しでも体感したいという思いを、
無意識に抱きつつ、歩いていた面もあります。
これは、日本統治時代、1925年竣工のソウルの旧駅舎。
造形的にも素晴らしいものでした。
東京駅の赤煉瓦駅舎と似ています。
誰の手による設計かは、東京駅の設計者・辰野金吾とする説と
同時代に辰野を支えて活躍した塚本靖とする説があるそうです。
●戦前派の御老人と出会う
パジュブックシティへ視察に行った帰途のバスの中で、
個人的には、この旅のハイライトといえる出会いがありました。
戦前の日本の教育を受けた御老人と出会ったのです。
バスに乗り込んだ際、
運賃箱にお金を入れたときに出たお釣りが自分のものと思わず、
放ったらかしに通り過ぎた私に、身振り手振りで
「あなたのものだよ」と示してくださったのが、
前のほうに座ってらした、この御老人でした。
思わず頭を下げると、御老人は笑みをたたえながら、
ご自分の隣の空席を指しつつ、
「シッダウン」とおっしゃいます。
素直に従うと、御老人の口から、ゆっくりとした口調の綺麗な日本語が。
「日本からいらしたのですか?」
「お仕事はなにをなさっていますか?」
そんな質問に答えていくうちに、だんだん打ち解けてきます。
「日本では老人を大切にしていますか、敬っていますか?」
そう思い、行動している人は沢山いると思いますが、国や政治家からはあまりそういう姿勢が伝わってきません……と答えると、
「そうですか。韓国も同じですね」
御老人は、日系企業の石油関係のプラント建設の現場で長く働いておられたそうで、
中東などへも行かれたといいます。リタイア後は投資などで成功されたとのこと。
あとでお年をうかがうと、79歳。
15歳まで日本の教育を受けたことになります。
真面目に働かれたことを証明するような、
節くれだった手をしておられました。
しばし世間話のようなかたちで話をするうち、
よければ、名刺をください、と言われ、お渡ししました。
「酒井さん、ですね。私は南(ナム)と言います。日本式に
ミナミと呼んでください」
かなり打ち解けた気がした頃合いで、私は次のような質問をしてみました。
「日本人や日本のことをどう思っておられますか? お嫌いですか」
御老人はすぐ笑って首を横に振りつつ、こう答えました。
「日本人だから嫌いなんてことはない。韓国人だって日本人
だっていい奴がいれば悪い奴もいる。それだけのことだよ」
そのあと、御老人はぽつりとこうおっしゃいました。
「……酒井さん、日本にサムライはいまもいますか?」
ハートやマインドという意味でなら、そういう人はいます……と答えてから、
「戦前はそういう日本人はたくさんいたのですか、学校の先生とか」と訊ねると、
遠くを見る眼差しで何度も頷いておられました。
そのうちに、「名刺をもう一枚ください」と言われ、お渡しすると、
御老人は、そこにご自宅の電話番号を書いてくださいました。
「私の家のほうは魚が美味しいんです。美味しいどぶろく、
マッコリね。美味しいどぶろくがあります。今度また韓国
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迎しますよ」
なんだか、鼻の奥がつんとしてきて、
泣きそうな気分になりました。
御老人はこんなこともおっしゃっていました。
「日本の男は真面目なのはいいですが、細かすぎる。もっ
と大らかに生きたほうが幸せなのではないですか。お酒も
ね、こんな小さな器で(と、お猪口の形をつくって)飲む
でしょう。私ら韓国人は、どぶろくをこういうどんぶりで
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(編集部・酒井俊宏)
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