酒井俊宏の「こんな社長さんに会ってきました!」 | 経営者会報 (社長ブログ)
「経営者会報ブログ」&「ニュートップリーダー」編集記者・酒井俊宏の「こんな社長さんに会ってきました!」
【取材日記】伊那食品工業 塚越 寛さん ─2─
(前回取材日記より続きます)
伊那食品工業会長・塚越 寛さんは
信念の人でした。
同社の実質的な創業者といえる塚越さんですが
ご本人の信念がそのまま、同社の企業風土に結びついている──
そう感じずにはいられませんでした。
同社の基本姿勢は、塚越さんがご著書、
『リストラなしの「年輪経営」』の中で述べ
そのタイトルからもわかるとおり、
着実に、木が年輪を刻むように、
少しずつ成長していく会社を目指すというものです。
なんのためか。
それはこの社是の実現のためです。
(↓応接室に飾られていたものです)
塚越さんのおっしゃる「いい会社」とは
経営上の数字がよいだけでなく、
会社を取り巻くすべての人々から
「いい会社だね」と言ってもらえる会社のこと。
すべてのステークホルダーと
良好なウィン-ウィンの関係を保つことが
企業の永続につながるという発想です。
塚越さんの考える、一般にいわれる「良い会社」とは、
要約すれば売上至上主義、時価総額主義など、
往々にして社員の幸せを犠牲にする会社のこと。
当然ながら、そうした会社を目指す気はまったくないとのことです。
(みなさん真剣かつ楽しそうに仕事をしておられました)
そのために同社と塚越さんが守り続けているのが、
「年功序列」の人事制度です。
機械的に横並びなのではなく、飛び抜けて優秀な人に対しては
抜擢人事はしているそうです。
年功序列の弊害は、高度成長期の終わりとともに
長く指摘されてきたことではあります。
それは、平たく言ってしまえば、
年相応に働かない(働けない)社員が多く出てきたということでしょう。
年功序列では、年相応に働かない人を甘えさせる結果になるということ、
それと企業側が人件費をコスト視する傾向とあいまって
多くの企業で成果主義が導入されたわけですが、
結果、さまざまな弊害も生じたというのが、
この10年あまりの人事考課制度の流れだったと思います。
では、同社の年功序列制度はなぜ成り立つのか。
塚越さんは次のような表現でお答えくださいました。
「みんなが、会社のため、周囲のみんなのために、
あるいは自分自身のために、毎日なにがしかの努力
をして高めていくような状態にある会社では、年功
序列が正しいに決まっています」
「人間、だてに生きていない。経験が積み重なって
いったら賢くなる、絶対賢くなる。どんな人でもね。
だから年功序列が正しい。別の角度から考えると、
子供が育ってきたら金がいるんです。いる時期があ
るんですね。年功序列じゃなくていわゆる成果主義
でやると、子供にお金がかかるのにお金がない人も
出てしまう。トンビがタカを生むこともあるでしょ
う。親父がダメでも子供は優秀ということはいくら
でもある。そういう子供たちが教育機会が得られな
かったら、国家的な損失です」
……うちの社員にトンビはいないけど、と付け加えて
このようにおっしゃいました。そういう塚越さんですから、
昨今の大企業のリストラには当然批判的です。
「雇用する責任というのは、会社を経営していくうえ
で最大の、一番基本的な責任です。それを放棄した会
社に明るい将来があるのか、甚だ疑問ですね」
そんな塚越さんの自慢は、社屋でもなく環境でもなく、
やはり社員のみなさんです。
この取材の日、いつもは車通勤だそうですが、
この日はたまたま、ご自宅から15分ほどの道のりを
歩いてこられたそうです。
「みんなが掃除している最中に来たわけです。凄まじ
いね。実際ビックリしました。社員が全員でやってい
る、それぞれが自発的に。すごいって思いましたね。
頼もしいかぎりです」
そうおっしゃる塚越さんご自身、
社員のみなさんと一緒に掃除をしておられるのを
取材前に周辺を散策していた私は見ています。
このような塚越会長の経営観や人生観は、
高校生の頃、肺結核を病まれた経験から来ています。
病から立ち直った塚越さんは、心底、
「働けるだけで嬉しい」
ということに思い至ったそうです。
職場環境を整えるのも、塚越さんにとっては
当然のことなのでしょう。
同社のオフィスには、マッサージチェアがあちこちに置かれ、
社員食堂も、渓谷に面したテラスがあったりと、
とても一企業の食堂とは思えません。
会社負担で一年おきに海外に社員旅行に行くのも、
なかなかにできることではなく、
もう何十年も続けているそうです。
このほかにも、「教育勅語」を研修に使われたり、
「ケチは悪循環の始まり」「利益なんてカス」
といった刺激的なフレーズが並ぶ、塚越さんのお話には
仕事であることをときどき忘れながら、聴き入ってしまいました。
記者冥利に尽きる、幸せな時間でした。
全部をご紹介したいのはやまやまですが、
塚越さんのインタビューは、
経営者会報7月号に掲載させていただきますので
ぜひ、そちらでもご覧下さい。
塚越さん、伊那食品工業の社員のみなさま、
ありがとうございました!
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伊那食品工業会長・塚越 寛さんは
信念の人でした。
同社の実質的な創業者といえる塚越さんですが
ご本人の信念がそのまま、同社の企業風土に結びついている──
そう感じずにはいられませんでした。
同社の基本姿勢は、塚越さんがご著書、
『リストラなしの「年輪経営」』の中で述べ
そのタイトルからもわかるとおり、
着実に、木が年輪を刻むように、
少しずつ成長していく会社を目指すというものです。
なんのためか。
それはこの社是の実現のためです。
(↓応接室に飾られていたものです)
塚越さんのおっしゃる「いい会社」とは
経営上の数字がよいだけでなく、
会社を取り巻くすべての人々から
「いい会社だね」と言ってもらえる会社のこと。
すべてのステークホルダーと
良好なウィン-ウィンの関係を保つことが
企業の永続につながるという発想です。
塚越さんの考える、一般にいわれる「良い会社」とは、
要約すれば売上至上主義、時価総額主義など、
往々にして社員の幸せを犠牲にする会社のこと。
当然ながら、そうした会社を目指す気はまったくないとのことです。
(みなさん真剣かつ楽しそうに仕事をしておられました)
そのために同社と塚越さんが守り続けているのが、
「年功序列」の人事制度です。
機械的に横並びなのではなく、飛び抜けて優秀な人に対しては
抜擢人事はしているそうです。
年功序列の弊害は、高度成長期の終わりとともに
長く指摘されてきたことではあります。
それは、平たく言ってしまえば、
年相応に働かない(働けない)社員が多く出てきたということでしょう。
年功序列では、年相応に働かない人を甘えさせる結果になるということ、
それと企業側が人件費をコスト視する傾向とあいまって
多くの企業で成果主義が導入されたわけですが、
結果、さまざまな弊害も生じたというのが、
この10年あまりの人事考課制度の流れだったと思います。
では、同社の年功序列制度はなぜ成り立つのか。
塚越さんは次のような表現でお答えくださいました。
「みんなが、会社のため、周囲のみんなのために、
あるいは自分自身のために、毎日なにがしかの努力
をして高めていくような状態にある会社では、年功
序列が正しいに決まっています」
「人間、だてに生きていない。経験が積み重なって
いったら賢くなる、絶対賢くなる。どんな人でもね。
だから年功序列が正しい。別の角度から考えると、
子供が育ってきたら金がいるんです。いる時期があ
るんですね。年功序列じゃなくていわゆる成果主義
でやると、子供にお金がかかるのにお金がない人も
出てしまう。トンビがタカを生むこともあるでしょ
う。親父がダメでも子供は優秀ということはいくら
でもある。そういう子供たちが教育機会が得られな
かったら、国家的な損失です」
……うちの社員にトンビはいないけど、と付け加えて
このようにおっしゃいました。そういう塚越さんですから、
昨今の大企業のリストラには当然批判的です。
「雇用する責任というのは、会社を経営していくうえ
で最大の、一番基本的な責任です。それを放棄した会
社に明るい将来があるのか、甚だ疑問ですね」
そんな塚越さんの自慢は、社屋でもなく環境でもなく、
やはり社員のみなさんです。
この取材の日、いつもは車通勤だそうですが、
この日はたまたま、ご自宅から15分ほどの道のりを
歩いてこられたそうです。
「みんなが掃除している最中に来たわけです。凄まじ
いね。実際ビックリしました。社員が全員でやってい
る、それぞれが自発的に。すごいって思いましたね。
頼もしいかぎりです」
そうおっしゃる塚越さんご自身、
社員のみなさんと一緒に掃除をしておられるのを
取材前に周辺を散策していた私は見ています。
このような塚越会長の経営観や人生観は、
高校生の頃、肺結核を病まれた経験から来ています。
病から立ち直った塚越さんは、心底、
「働けるだけで嬉しい」
ということに思い至ったそうです。
職場環境を整えるのも、塚越さんにとっては
当然のことなのでしょう。
同社のオフィスには、マッサージチェアがあちこちに置かれ、
社員食堂も、渓谷に面したテラスがあったりと、
とても一企業の食堂とは思えません。
会社負担で一年おきに海外に社員旅行に行くのも、
なかなかにできることではなく、
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