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【取材日記】中里スプリング製作所 中里良一さん

投稿日時:2013/07/03(水) 11:42rss


過日、『月刊ニュートップリーダー』の取材で、
中里スプリング製作所・中里良一社長にお会いしてきました。
 
『トップが育てば会社が育つ』と題した特集記事で、経営危機や不祥事、
あるいは社内の軋轢などをきっかけに、ご自身を成長させることの大切さを痛感し、
自分で自分を鍛えてこられた社長さんにご登場いただいています。

 
中里社長です。


 
 

工場内部。キリンのオブジェは自作されたものです。

 
 
■中里スプリング製作所 ホームページ >>>
 
 
群馬県甘楽(かんら)町に工場をかまえる同社は、
技術力あるばねメーカーとして業界内外から高い評価を得ています。
それだけでなく、独自の経営でも注目されています。
くわしくはニュートップリーダー6月号をご覧いただきたいと思いますが、
少しだけ紹介します。
 
大きな特徴は、企業としての判断基準を「好きか嫌いか」に置いていること。
営業は社長だけがやるそうです。中里社長はこう言います。
 
「中小製造業で社員が一番嫌で苦手なのは営業です。
嫌なことはやらせたくないので社長がやる」
 
毎月一回、全社員で集まり、半日から一日かけて、
それぞれの個人的な夢を語り合うという「夢会議」。
社長が独断で年に一度、がんばっている人を1、2名表彰する「ご褒美制度」。
後者では、受賞者に「会社にある材料と設備を使って好きなものをつくれる権利」か、
「嫌いな取引先を一社、切ることのできる権利」を与えるそうです。
いずれも30年以上続けているそうです。
 
中里社長は、社員が会社を「好き」でいられるように心を砕いてきました。
 
「儲かるか儲からないか、うまくいくかいかないかで
考えるから失敗する。善良な人間の集う組織であるな
ら、好き嫌いで決めればいいんです」
 
独自の経営は、経営者個人の強い自負や器の大きさがあってこそ、可能になります。
 
二代目の中里社長は、東京で商社に勤務したのち、25歳で入社します。
そして、すぐに、社員との距離を感じます。
二代目として尊重されこそすれ、誰からも尊敬はされず、侮られてすらいると感じたのです。
 
そこでまず、誰にも負けない技術力を磨こうと決意します。
毎晩、社員が帰ったあと、工場に戻って明け方近くまでばねをつくる。
両親には「飲みに行ってくる」と言い残し、工場に戻る。
そんな生活を続けて技能を身につけ、五年もすると全員に一目置かれるまでになっていました。
 
並行して、自分の甘さを克服しようと、それまでの知人・友人関係を断ったというから驚きます。
こちらも、五年ほどして、それでも会いたい、教えを乞いたい、という人には詫びて、
つきあいが復活していったそうです。
 
「二世、三世は裏口入学みたいなもの。だからよほど
覚悟を決めて、自分を鍛えないとダメ」
 
なかなかできないことです。己を鍛え抜いてこられたこと、鍛えられたという自覚が、
経営者としての自信を育み、求心力を手にすることになったのでしょう。
 
自らを鍛えて得た強さと、従業員さんにむける眼差しの温かさ、優しさ──。
こういう社長さんのもとで働ける従業員のみなさんは、幸せだと思いました。
 
 
(編集部 酒井俊宏)
 
 
 


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『月刊ニュートップリーダー(L.)』(前身は「経営者会報」)編集部にて社長の取材記事を担当。十数年の間に800名以上の経営者に取材、多くの経営者に感銘を受けた経験から、「日本を支えているのは中小企業とその経営者」と確信し、敬意を抱いている。『経営者会報ブログ』サイト編集部員も兼ねる。

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